所得税が少ない場合値引き交渉も選択
さらにこれまで住宅ローン控除の対象外となっていた築20年超(耐火構造物では築25年超)の中古住宅についても、地震に対する技術的基準に適合する「耐震基準適合証明書」を取得していれば控除の対象になる。新耐震基準が採用された1981年以降に建てられた住宅は、この証明書を取得できる可能性が高い。
証明書は原則として売り主が取得することになっており、物件の引き渡し後に買い主が申請することはできない。適合証明を取るためには手間も時間も要するし、申請しても適合のお墨付きがもらえないとなれば売買に支障をきたすこともある。このことから考えて、売り主や仲介会社自らが、適合証明について積極的に言及するとは考えにくい。適合住宅を取得しても買い主が制度を知らなければ、何百万円かの住宅ローン控除を逃しかねないわけだ。
もっといえば、一定の耐震性が担保されていない物件を買うのはリスクがあり、その意味でも築深の物件を買うなら適合証明を受けていることを条件にしたい。もし、新たに適合証明を受けようとすると時間もお金もかかる。
早く売却したい売り手が相手ならば、その分値引き交渉するのも一つの手だ。住宅ローン控除は納めた所得税が還付される制度で、自分の納付税額が少なければ還付額も限られる。場合によっては値引きのほうが有利になることも考えられるからである。
いずれにしても、中古も含めてどんな家も動かそう、寝た子を起こして景気を浮揚させよう、という政府の狙いが垣間見える。資金的に問題がなければ恩恵を受けたいが、政府の甘い誘いに振り回されぬよう注意したい。
※すべて雑誌掲載当時