「ライフタイムバリュー×アクティブユーザー数」
一方、アマゾンも商材の幅をどんどん増やしながら、2005年からアマゾン・プライムという会員プログラムによる顧客の囲い込みを開始しました。
アメリカでのアマゾン会員は2017年7月には8500万人に達し、3年前の2800万人から3倍以上ものびています。このプライム会員のプログラムを見ているうちに、わたしが気づいたのは、アマゾンの収益モデルは日本の小売業のそれとはまったく発想が異なるということでした。
日本の小売業では、売り上げの増減を判断するとき、1店舗・1日あたりの「客単価×客数」を尺度とします。
そのため、1日に来店する顧客数と顧客の1回ごとの客単価をあげるための施策をいろいろと講じます。
一方、アマゾンは収益について、「ライフタイムバリュー×アクティブユーザー数」でとらえるのです。
ライフタイムバリューとは、「顧客生涯価値」とも訳されます。1人の顧客が特定の企業やブランドと取引を始めてから終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)において、どれだけの利益をもたらすかを算出したものです。
これを顧客の側からとらえれば、ライフタイムバリューの高い顧客は、生涯にわたって得られる価値や満足度が高いということができます。
一方、アクティブユーザーとはもともとはIT用語で、要は利用頻度が高いユーザーのことをいいます。
1日の利用客数や1回ごとの利用額を増やすこと以上に、ライフタイムバリューの高いアクティブユーザーを1人でも増やすことを重視する。それが、アマゾンの収益モデルです。たとえば、「客単価×客数」の収益モデルでは、1回の購買単価が1000円の顧客と100円の顧客とでは、前者のほうが収益に貢献したことになります。