スーパーでは新聞折り込みの「チラシ」に力を入れている店が多い。「特売」を知らせる重要なツールでもある。だがオーケーは特売をやらず、いつでも安いので、チラシは重要ではない。このためオーケーのチラシはサイズが小さく、デザインも立派なものとはいえない。おそらく配布部数も多くはないのだろう。

オーケーでは2004年から、生鮮品を除いたほぼ全ての商品で自動発注を取り入れている。自動発注は、「EDLP」だからこそ力を発揮する。特売形式は商品の在庫変動の波が大きく、需要予測を立てづらい。「EDLP」では波が小さくなるので、自動発注でも精度の高い発注ができる。これで発注作業の手間が省け、その分の人件費を抑えられる。

オーケーの売価が他店より圧倒的に安く、しかも驚異的な利益率の高さを実現しているのは、こういった経費削減の積み重ねによるものだ。17年3月期の売上高経常利益率は4.4%で、業界平均2.2%(新日本スーパーマーケット協会「2018年スーパーマーケット白書」より)の倍にもなる。売上高は大きく伸びていて、17年3月期は前年比7.7%増の3309億円だった。

正直に「普段よりも品質が劣ります」と語るカード

そしてオーケーの強さは、安さだけではない。「オネスト(正直)カード」と呼ばれる仕組みがある。「相場が高騰しているため来月の買い付け分から値上げします」「長雨の影響で普段よりも品質が劣ります」といった情報を、店頭のPOPで客に知らせているのだ。この正直さで、客からの信頼の獲得に成功している。

オーケー用賀駅前店に掲示されていたオネスト(正直)カード(編集部撮影)

高い接客力も、店と客の距離を縮めることに寄与している。オーケーでは10年から、接客力が高い店員に「ガーベラ記章」を贈呈し、接客力の向上に取り組んでいる。13年には個人の接客状況を審査する「エンジェルチーム」を発足するほどの力の入れようだ。

いかがだろうか。「良い商品を低価格で」を実現するために、ここまで徹底しているスーパーがほかにあるだろうか。顧客満足度が7年連続で1位というのもうなずける。他社がこれらすべてを短期間でまねることは困難だ。顧客満足度においてオーケーの独走はしばらく続くだろう。店舗網や業績の拡大も、当面続きそうだ。

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
関連記事
ドンキが都心でも地方でも勝ちまくるワケ
セブンの40倍も儲かるコンビニATMの謎
スシローが"変わり種競争"から降りたワケ
なぜラーメン二郎は"パクリ店"を許すのか
渋滞3時間を10分に短縮した吉野山の偉業