本当に必要なのは郊外、生活の足になれるか
シェア自転車自体は、日本でも観光地を中心に観光の補助として定着しているが、普段の生活の移動手段としての考えは浸透してこなかった。中国では庶民の足となり人気となったシェア自転車だが、サービスをそのまま日本に輸入するのは難しいという。
中国経済などに詳しい東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授は「中国では自転車をどこにでも乗り捨てられる利便性の高さが評価され、一気に広がった」と説明する。乗り捨てられた自転車はそのまま別の人が利用したり、GPSを辿ってスタッフが回収しにきたりする仕組みになっている。放置自転車に対する世論が厳しい日本でその方式を実現するのは「難しい」のだ。
そんな中、日本で成功する鍵となるのはいかに自転車を借りたり返したりできる“ポート”を多く、必要とされる場所に設置できるかだという。東京都千代田区、港区などがドコモ・バイクシェアと組んで都心部の約300カ所にシェア自転車のポートを設置しているが丸川教授は「現状として全く足りていない」と手厳しい。
「日本は土地の所有権が複雑で、自治体が主導すると、自治体の所有地にポートが設置されることが多くなってしまう。それでは『家』『駅』『スーパー』など生活にかかせない拠点を結ぶ足とはなりにくい。そもそもどこに設置しているのかもよくわからない。その点、コンビニは生活に密着しているうえ、駅前や住宅地にもあり、ここにポートがあればシェア自転車の使い勝手が各段によくなる。シェア自転車を人々に認知させ、使ってもらうには最適な場所である」
また、セブンがサービスを埼玉県や神奈川県に広げることも評価する。「都心部であれば地下鉄もあるし、駅から行きたい場所はだいたい徒歩圏内だ。実際、自転車が多く利用されているのは郊外である。民間企業が自分のリスクで狙いを定めた場所にポートを設置していくことはとても“筋が良い”計画で、期待ができる」。
日本式のシェア自転車は放置自転車の減少にもつながる可能性を秘めている。丸川教授は「セブンのみならず、他のコンビニでも貸し借りできるようになれば理想的だ」と話す。