さらには、現実的に多くの仕事がAIに取って代わられる時代が到来したいまこそ、この「論点を立てる力」がより重要になってきているのです。将来的には「論点を立てる力」さえも、AIに取って代わられるようになるかもしれません。
クリティカル・シンキングとは「論点を立てる」こと
ただ最後の最後まで、人に、特に経営者や組織のリーダーに必要とされ、AIがやる仕事と峻別されるのが、「論点を立てる力」を生かした仕事なのです。「論点を立てる力」を生かした仕事こそが、AI時代の仕事と言っても過言ではないでしょう。前出のケヴィン・ケリー氏も「AIは答えることに特化し、人間はよりよい質問を長期的に生み出すことに力を傾けるべきだ」と語っています。
ここで最も重要なのは、クリティカル・シンキングにおいては、「論点を立てる力」と「長期の目標設定を行う能力」とが同じスキルセットであるとされていることです。
実際にクリティカル・シンキングのプロセスでは、最初に目標やあるべき姿を定義し、次に何が問題であるのかを明確にし、最後に対策を考えていきます。目標やあるべき姿を定義するというプロセスは、長期の目標設定を行うプロセスと同一なのです。さらには人や組織が本当に取り組むべき課題を的確に設定していくためには、普段から問題意識を高め、大局観をもち、本質を見極める能力が不可欠です。
「自分や自分の組織においては、いま何を問いかけるべきであるのか」「自分や自分の組織においては、いま何に答えを出すべきであるのか」という視点は、長期の目標設定を行う視点と同一なのです。
AI時代にビジネスパーソンに本当に求められる力――未来を創る力には、論点を立て、解決までの筋道を考える構想力、そしてそのための長期の目標設定が不可欠なのです。
「いま、世界はどのような状況にあり、自分たちが置かれている国家や社会や業界はどのような立場にあるのか」「自分たちが果たすべき役割とは何であるのか」「その役割にしたがって自分たちは何をしていくべきであるのか」。最終的には組織のリーダーとして、これらの課題設定を行っていく能力を養っていくのが、これからの時代には求められているのです。