義父の1億円資産消滅で、遺産ゼロ

世田谷区在住の女性Bさん(54歳)も将来のマネープランの見込みが狂ってしまった。誤算の始まりは、近くに住む義父(83歳)の介護の世話だ。「俺は絶対、在宅介護!」と言い張る元経営者で、俺様的な態度が抜けない義父を献身的にサポート。義父は個人的に複数のヘルパーも依頼(介護保険外)したため、介護費は、月60万円(うち月23万円程度は年金から捻出)。また、要介護1~2だったこともあり、年数回の旅行(Bさんやヘルパーさんも同行)、友人知人との会合にも参加するなど、外出費が年200万円にも及んだ。Bさんから相談を受けた、ファイナンシャルプランナー・畠中雅子さんはこう語る。

「実はBさんの義父は資産が1億円超ありましたが、Bさんが在宅で介護した7年間でもろもろ込み5000万~6000万円ほど目減りしました。その後、要介護度4以上になったため、義父は自宅を売り(約6000万円で売却)、同じ世田谷区内の介護付き有料老人ホームへ(入居一時金約5000万円)。月々の負担は35万~36万円。年金で補填できない分は持ち出しで、貯蓄はさらに減り続けています」

義父を介護したBさんは心身が疲労しただけでなく、自分たち夫婦の老後設計も狂わされた。義父の他界後は家と資産を相続できると予想していたが、その目論見額が大幅に減少したのだ。

「義父が最初から東京郊外や都外のリーズナブルな施設に入居して、当初の在宅介護でも旅行や外出を控えていれば、家も資産も残ったはずです」(畠中さん)

下流な人と同じ介護施設は嫌だ、といった義父の上から目線の生き方が仇となった形だ。

畠中雅子
1963年生まれ。ファイナンシャルプランナー。家計相談のほか、40代以上の引きこもりの子がいる親の相談も受ける。著書に『ミリオネーゼのマネー術』など多数。
 
(構成=大塚常好)
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