楽しい、好きだからやっているだけ
池山さんは1969年、京都市に生まれた。北野天満宮(上京区)の近所に住んでいて、「天神さんの牛の像に乗って遊んでいる写真が残っています」。
6歳のとき、父の故郷である岡山へ転居。家族は父と、母と弟が2人。岡山市内にある小・中学校を経て、県内でも有数の進学校へ。「数学とか理系が苦手で、高校時代は楽しくなかったですね」。
クラブ活動を選ぶにあたって、同級生の女子に柔道選手がいると聞き、「まだ女子柔道はメジャーではなくて、知りませんでした。それで好奇心から入部しました」。
在籍中に池山さんは昇段試験を受け、初段となる。黒帯を締めて、岡山県大会へ。女子52kg級で3位に入賞した。そのころも現在も、池山さんの身長は152cmと小柄である。
「これで格闘技に目覚めた、というわけではありません(笑)」
同級生のほとんどが大学へ進むなか、池山さんは岡山市役所へ就職。
「勉強は好きではありませんでしたから」といいつつも、岡山大学の法学部夜間主コースへ入学。役所の公務を終えたあとは、大学へ通う毎日を送った。通勤、通学は、バイクを使う行動派であった。
「そのうち、定時で終わる部署に配属され、夕方5時以降、やることがなくて。そんなとき、フジワラ・ジムができたんです」
ファイトマネーはもらっていない
ボクシングと出合ってから、勤務時間以外はボクシングに恋して、のめり込んでしまった。「もともと、結婚願望はなくて、ずっと独身です(笑)」。プロボクサーとなった現在も、本業は岡山市役所の職員である。
ところで、公務員は副業禁止が原則である。プロボクサーともなればファイトマネーという収入が生じるはずだが。
「はい。デビュー戦以降、現在まで、ファイトマネーはもらっていません。それは市役所からも諒解を得ています」
ボクサーといえば、拳ひとつで一攫千金も夢ではない職業。ところが、彼女にはそんな金銭欲などまったくない。
岡山市役所では、2014年10月、池山さんのWBO女子王座獲得と防衛を称え、岡山市人見絹枝スポーツ顕彰「岡山市民スポーツ栄誉賞」(※1)を贈呈した。京都府も、同年11月、京都府スポーツ特別奨励賞を山田府知事が贈呈する。「なんか、いろいろいただきましたけど……」と、名誉欲のほうも、さらさらない。
「好きでやっているだけです」
ボクシングが生き甲斐ということか。