順風だと思われていた文春だが、ここへきてライバルの週刊新潮から、新潮の中吊り広告を早く手に入れて、スクープを盗んでいると告発されている。

新潮によれば、文春側に情報が漏れているのではないかとの「疑念」を抱いたのは14年9月11日号。新潮は朝日新聞の「慰安婦誤報」をめぐって、朝日で連載していた池上彰が「朝日は謝罪すべきだ」と書いた原稿を掲載しないとしたことで、連載引き上げを決めたという記事を掲載し、中吊りにもかなり大きく打った。

情報のためにはあらゆる手を尽くす

この週の文春の中吊りは池上の件には触れていない。だが、新聞広告には「『池上彰』朝日連載中止へ『謝罪すべき』原稿を封殺」のタイトルがあり、「記事中の池上氏のコメントはわずか6行で、急遽差し挟まれたような不自然な印象を読む者に与えるのだ」(新潮)。

池上も、新潮の取材に対して、文春から電話があったのは新潮の取材があった後で、校了日の午後5時半だったと話している。文春の新谷学編集長は最近、『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社)という本を出した。その中で、

「池上彰さんのコラムを朝日新聞が掲載拒否した件では、同日発売の週刊新潮も同様の記事を掲載していることがわかったので、校了日である火曜日の夜に『スクープ速報』を配信した」

と書いている。そのほかにも、文春に中吊りが流れている疑惑があると考えた新潮は、文春側に「不正を止めろ」と通告するのではなく、漏洩ルートを突き止めるための調査を続けた。

新潮が誇る調査力で、漏洩しているのは新聞広告ではなく中吊り広告。新潮の中吊り広告の画像データから、そのPDFファイルがコピーされたのは、文春編集部にあるコピー機であることが判明した。

さらに、漏洩元はどこかを突き止めると、出版取次会社「トーハン」(東京)が、文春の人間に渡していることがわかった。文春の30代の男性が、受け取った中吊りをコンビニでコピーを取っているところを「激写」されている。

しかし、週刊誌といえども編集部員の数からして中規模企業ぐらいはある。梶山季之が書いた『黒の試走車』ではないが、ライバルが何をやっているのか、どんな情報を持っているのかを探ることは雑誌の浮沈、そこで生活しているフリーの記者、筆者たちの生存にかかわるのだから、あらゆる手を尽くして情報を取ることが一方的に悪いといえるのだろうか。