2020大学入試改革「記述式問題例」は看板倒れか
その証拠に、「知識偏重型」と大学入試改革派が論難する大学入試センター試験の平均得点率は、文系(5教科8科目)で約60%、理系(5教科7科目)で約62%にすぎない。また、中層部分・上層部分のスキルを診る側面が強い(とされる)大学のAO入試状況を分析してみると、難関大学では優秀な学生獲得に成功しているものの、中堅以下の大学ではAO入試を経て入学した学生の退学率が一般入試を経た学生の倍になってしまったというデータも存在する。
そして、一番の問題は、2020年度からの大学入試改革の雲行きが怪しくなっていることだ。
文部科学省は2015年12月、新テストである「大学入試共通テスト(仮称)」の素案を示した。ここでは国語のみならず、各教科で一部は論文レベルのものを含む「自由記述」(の解答)を求める問題が多く盛り込まれていた。
「従来のセンター試験にかなり近づく」
ところが、5月16日、の「問題例」では、その内容が大きくトーンダウンし、従来のセンター試験にかなり近づいた問題に戻っていた。
たとえば、国語では従来型のマーク式に加えて、3問の記述問題(最大120字以内)を加えるとしている。モデル問題例を見たが、自由記述……というよりただの条件記述問題である。数学の記述問題も同様。解答に至るまでの過程を記述させるというより、解答そのものを記述させるレベルばかりだった。
しかも、今後さらにトーンダウンするのではないかとわたしは予想している。なぜなら、2017年3月31日におこなわれた高大接続システム会議の議事録では、「最終回」にもかかわらず「検討」という言葉がそこかしこに登場しているからだ。
「わが校は21世紀を生きる子どもたちのために、大胆な教育改革に踏み切りました」などと謳っている学校は、もし2020年度からの「大学入試共通テスト(仮称)」が従来のセンター入試とあまり代わり映えのないものになるのならば、新たに採り入れた教育手法を捨ててしまうのだろうか。でも、それは「大胆な教育改革」そのもの(大学入試云々とは関係なく)を期待して入学してきた子どもや親に対する「裏切り」である。