押しつけられたS&Wは粉飾のオンパレード

ところが買収したS&Wの実態はとんでもない粉飾決算のオンパレードだった。

12月末に買収が完了後、本来あるべき11億7400万ドル(約1326億円)の想定運転資本額が実際にはなかったという。そればかりか、WHの算出値では9億7770万ドル(約1173億円)のマイナス。しかもS&Wが建設工事を進めていたジョージア州とサウスカロライナ州の工事もS&Wの買収後、この建設を新規に請け負った米エンジニアリング会社、「フルアー」が改めて見積もり直すとすでに数十億ドル(数千億円)の損失が発生していたという。

東芝は2016年12月27日に「CB&Iの米国子会社買収に伴うのれん及び損失計上の可能性」というニュースリリースを発表、「必要なのれんの計上額は当初想定の8700万米ドルを超え、現時点で数十億ドル規模(数千億円規模)になる可能性が生じました」(同リリースより)と説明した。

WHはサザン電力、スキャナ電力以外にもショー・グループと組んで米国プログレス電力の子会社であるプログレス・エナジー・フロリダ(PEF)や中国などで原発を受注している。その工事もまた遅れており、今後さらに偶発債務が発生する可能性は否定できない。

網川智社長は14日の会見で東芝が経営の方向性を間違った理由といて「WHを買ったことといえなくもない」と説明している。

しかしそんなさなかでもまだ隠ぺい体質は治っていない。

東芝は今年に入ってから、WHによるS&W買収の取得価格配分手続きの過程で内部手続きの不備を示唆する内部通報があったことから、弁護士を使って調査をしていた。ところがその弁護士に対してWHの経営陣が「不適切なプレッシャー」をかけた疑いがあり、それが14日の決算延期の原因になった。日本テレビはその後の取材で「内部通報では東芝の志賀重範会長とアメリカの原発子会社ウエスチングハウスのロデリック会長が名指しされていたことがわかった」と報じている。

経営危機に陥ってもなお、続く東芝グループの隠ぺいに不正。いったいどこまでそれは続くのか。3月14日の2016年度第3四半期の決算発表ではすべてが明らかになるのか。

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