ショー・グループに翻弄された東芝
しかしとんだ“おまけ”がついていた。米国の大手エンジニアリング会社「ショー・グループ」だ。ショー・グループはWHのEPC事業(エンジニアリング、調達、建設)に関して独占的に行う権利を持っていることから、その後のエンジニアリングを独占的に担当することになり、今回問題となっているCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)はショー・グループの傘下の企業だった。
出資は東芝をはじめ、ショー・グループ、IHIが加わることになり、東芝の出資比率は77%(41億5800万ドル)、ショー・グループが20%(10億8000万ドル)、IHI 3%(1億6200万ドル)となり、07年にはカザフスタン共和国のカザトムプロムが東芝が保有するWHの株式10%を取得、一時は4社で株式を保有した。
WHはショー・グループ、S&Wと工事の受注に向けて奔走した。
08年4月には米国サザン電力の子会社であるジョージア電力(ジョージア州)と、5月には米国スキャナ電力の子会社であるサウスカロライナ・エレクトリック&ガス・カンパニー(SCE&G)と、それぞれ2基ずつ新規原子力プラントの建設に関する契約を締結した。このときショー・グループもパートナーとして参加、11年から着工する予定だった。しかし東日本大震災で13年まで着工できず、工期が遅れ、その費用の負担を巡って発注元やS&Wと訴訟騒ぎとなり、工事はさらに遅れた。
そうした中でショー・グループは13年1月に買取請求権がついていたWHの株を東芝に売却。13年2月に米国のCB&Iの傘下に入り、15年10月にはS&WもWHに売り払い、原発事業はから足を洗ってしまった。
東芝は当初、原発事業を単独でできるとほくそえんでいたのかもしれない。
「WHは、S&W取得のタイミングに合わせ、サザン電力、スキャナ電力と、米国のプロジェクトに関し現在訴訟となっているものも含め、全ての未解決のクレームと係争について和解をすることに合意しました。また、価格とスケジュールを見直すことにも合意しました。WHは今後も両オーナーとの協力関係を継続し、米国のAP1000TMプロジェクトの建設工事を進めます」と書かれたニュースリリースからもそうした東芝の思いを垣間見ることができる。