できなかった理由を並べても意味がない
ところが、日本電産は……というと、前期の実績に関しては、○△×のマークだけです。計画どおり達成できたなら○印が記してあるだけ。8割ほど実現できた場合は△。8割以下なら×。たったこれだけです。
経営計画発表の席では、パワーポイントで作成した資料をモニターに映し出しながら説明するのですが、「前期」に関する結果報告のページはこれらのマークだけしか書かれていませんでした。私も、日産から転職して初めてそれを見たときは、本当にびっくりしたものです。
反対に、前期の結果を受けて来期はどうすべきか、何をやるか、どうやるかということが、経営計画の資料にはたくさん書いてあります。資料のページのほぼ全部は、計画達成のためにこれからすべきことについての記述で埋まっているのです。
永守社長は、言い訳には関心がありません。以前、こんなことがありました。ある企業を買収した当初、そこの幹部が経営方針発表会で計画未達の理由を長々と説明し続けていたところ、永守社長が厳しく叱責したことがあります。
「いつまで、できない理由をダラダラ喋っているんだ。大事なのは、どう戦うかだろう」
求められているのは、計画未達の理由ではありません。それよりも、未達に終わったものを達成させるためにこれからどうするのか、立てた計画をどうやって達成させるのか、すべては計画をつくってからのことなのです。
そういう意味では、日本電産はまさに「計画をつくってからの会社」です。計画達成のために全社員が必死に取り組み、徹底的に結果にこだわっていく。日本電産の強さの秘密はこうしたところにもあると感じています。
※本記事は書籍『日本電産永守重信社長からのファクス42枚』(川勝宣昭著)からの抜粋です。