それではがん遺伝子診断は、どのような手順で行われているのか説明しましょう。

まず、担当医師が患者に対して、がん遺伝子診断の概要を説明し、同意を得ます。次にがんのサンプルと血液からDNAが抽出され、次世代シークエンサーで解析を行った結果、変異を起こしていると予測される遺伝子が絞り込まれます。

遺伝子変異の詳細情報。(1)遺伝子変異の場所(2)疾患データベース(3)コンピュータ予測結果を示す。

そのシークエンスデータと呼ばれるものが、わが社に送られてきます。そのデータを解析し、変異部分を検出、さらに、がん細胞の増殖に関与している遺伝子変異(ドライバー遺伝子変異)に基づく分子標的治療薬の候補を選定します。分子標的治療薬は、がん化した細胞だけを狙い撃ちにする薬剤であるのに対し、従来の抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)はがん細胞以外の正常な細胞にも影響を与え、副作用も重篤なものがありました。しかし、がん細胞の増殖・転移に関わる分子を探し、それらを標的として効率的にたたけば、がん細胞も死滅・抑制できるのではないかと考え、開発された薬が分子標的治療薬です。

それらの有効性が期待される分子標的治療薬を選定した結果をレポートにまとめ、病院に送ります。結果は約2週間でわかります。その後、病院側で各科から構成されるチームカンファレンスで治療方針を決定し、診断書を作成します。それをもとにして患者さんにがん遺伝子診断結果を説明し、投薬・治療を行うことになります。

もともと三菱スペース・ソフトウエアは20年以上前から、遺伝子情報のデータ解析に参入していました。以来、高精度なデータ解析を蓄積して、今回、国内で承認された分子標的治療薬の組み合わせを解析できるアルゴリズムとソフトウエアを完成させたのです。

現在、北海道大学病院のほか、帯広にある北斗病院でも、がん遺伝子診断が行われています。費用は保険適応外で自己負担になりますが、25個のがん遺伝子を調べる検査が約42万円、160個の遺伝子を調べるのが約65万円かかります。

(構成=吉田茂人)
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