──その際、企業トップには、いかなる姿勢が求められるのか。
【能化】まず、トップの意識こそがテロ対策のカギだと強調したい。それはとりもなおさず「海外に赴任した社員の命を守るのは、会社とりわけトップの責任だ!」との覚悟だ。それでこそ社員も会社を信頼して働ける。
13年1月、アルジェリアのイナメナスで日本企業が関わる天然ガス精製プラントが攻撃される事件があった。現地の日本人社員が人質となり、10名の尊い命が失われてしまった。この日本企業は、事例を踏まえ、トップ自らが安全対策を最優先に取り組んでいく姿勢を示している。
──年末年始は海外への渡航客も増える。そこで、外務省が進めている安全対策を聞きたい。
【能化】日本人がテロに遭遇しないこと、また、万が一テロが発生してしまっても被害を最小限にとどめることを第一義に考えている。そのためには渡航前から、そして滞在中も継続的に情報を収集分析することが重要だ。
そこでいま、外務省が力を入れているのが「たびレジ」だ。日程と渡航先などを登録しておくと、その場所の最新の安全情報が外務省から携帯電話やスマホにメールで届けられる。
さらに渡航先でテロや自然災害が発生した場合には、外務省や在外公館が登録された電話番号や滞在先をもとに安否確認や、必要に応じて支援を行う。これまでの登録数は約140万人に達しており、より多くの利用を働きかけていく。
1959年、兵庫県生まれ。82年東京大学法学部卒、同年外務省入省。2003年アジア大洋州局大洋州課長、06年在フランス大使館公使、09年在エチオピア兼ジブチ日本国大使、11年内閣情報調査室次長などを経て、15年10月から現職。