首相を狙う人間は、本当に2人しかいないのか

「山上と、ウチの隆ちゃん。一億分の二だよ。まぁ隆ちゃんは、宗教がどうとか、そういうのはないけどね。ただ、あんなことをする奴なんて、どこかしら頭のネジが外れているんよ」

暗い部屋から見下ろしている男性
写真=iStock.com/Motortion
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こう週刊文春(4月27日号)に話したのは、4月15日の午前、衆議院和歌山一区補選の応援のため、雑賀崎さいかざき漁協の応援演説会場に駆けつけた岸田文雄首相を狙って、パイプ爆弾のようなものを投げつけ、逮捕された木村隆二容疑者(24)の実父である。

「一億分の二」というのは、昨年7月に安倍晋三元首相を手作りの銃で狙撃し、命を奪った山上徹也被告と、今回の事件を起こした息子のことをいっている。

父親は、こうした頭のネジが外れた人間はめったに出てこないという意味でいっているのだろうが、果たしてそうだろうか。私はこの言葉がものすごく気になっている。

その前に、木村隆二容疑者について見てみよう。

和歌山県和歌山市、紀伊水道に面した雑賀崎市は、〈紀伊国の/雑賀の浦に出で見れば/海人の燈火/波の間ゆ見ゆ〉と万葉集にも歌われた歴史ある地である。最近ではイタリアの景勝地になぞらえ“日本のアマルフィ”とも称されるという。

そんな静かな港町に4月15日の昼前、耳をろうする爆発音が鳴り響いたのだ。

木村容疑者はどんな人間だったのか

岸田首相(65)は小雨が降る中、候補者の応援のため、演説会場となった漁港を訪れていた。だが、スピーチへと移る直前、爆発物が投げ込まれて炸裂した。集まった約200人の聴衆から悲鳴が上がり、現場は大混乱に陥った。

警視庁のSPや和歌山県警警備部は、誰より先に危険排除へ動き出すべきだったが、出足は鈍かったという。

彼らの代わりに爆弾犯の身柄を取り押さえにかかったのが2人の漁師だった。その一人、寺井政見さん(67)は週刊新潮(4月27日号)にこう話している。

「船の板子一枚、下は地獄。せやから、わしらは助け合っとる。(今回も)仲間が犯人に飛びつくのを見て、お手伝いしただけや。(それに)悪いことをやった人は捕まえなあかんからな。それだけのことや」

漁師らの協力を得て和歌山県警が威力業務妨害の容疑で現行犯逮捕した木村隆二は、手提げカバンの中に刃渡り13センチの果物ナイフもしのばせていたという。

木村容疑者は、兵庫県川西市の閑静な住宅街に建つ一軒家で母親(53)と姉(28)、学年がひとつ違いの兄(25)たちと暮らしていた。

父親は赤帽の配送業者として、兵庫県内の製麺会社に出入りして配送を担当していたという。仕事は夜がメインだったが、仕事ぶりは至極真面目だったそうだ。母親は百貨店の美容部員をしていたこともあったという。

その後父親は赤帽をやめて個人で配送業を始めたそうだ。末っ子の隆二は父親っ子だったという。