なぜ動物には「セラピー効果」があるのか?
アニマルセラピーという人の気持ちを和らげる活動があります。
動物の体に触れたり、そのしぐさを見せたりすることで心身の緊張をほぐし、ストレスを軽減する治療法です。動物には人の心を癒す力があるようで(種類や性質にもよるでしょうが)、馬やイルカなどと触れ合うことで病気を伴う症状を軽減しようという試みが実際に行われています。
ペットを飼うのもそのひとつでしょう。ペットを心の支えにしている人は少なくありませんし、認知症予防の効果があるともいわれています。また、最近では「猫カフェ」をはじめとした、さまざまな動物がいるカフェが登場し、愛好者の癒しの場になっています。
それらと同様に、高齢者施設でもアニマルセラピーが導入されていたのです。動物は多くの人から愛される犬。それがドッグセラピーというわけです。
ともあれ、少なからず楽しめていない人がいたレクリエーションとは異なり、ほとんど全員の人を笑顔にしていたドッグセラピーの効果には目を見張りました。
それを知り合いのケアマネージャーに話したところ、ドッグセラピーに力を入れている施設を紹介してくれ、見学させてもらえることになりました。
埼玉県川越市にある主に認知症患者を対象にした医療を行っている「トワーム小江戸病院」です。同病院では、リハビリテーションやレクリエーションを目的に医療チームとドッグセラピストが連携して行う動物介在療法としてドッグセラピーを実施しているそうです。話をうかがったのは鈴木貴勝副病院長。
「当病院は2008年に開院し、今年で9年目を迎えました。できるだけ薬に頼らない方針も掲げており非薬物療法に重きを置いています。畑で野菜や植物を育てる園芸療法や音楽療法なども行っていますが、なかでも力を入れているのがドッグセラピーです」
導入されたのは、アニマルセラピーの効果に着目したスタッフが提案したことがきっかけ。同病院を運営する医療法人社団「松弘会」の前理事長が大の犬好きだったこともあって、その提案が通り始められたそうです。
開院時からドッグセラピストを務めてきたのが小林美千代さんはこう話します。
「当初はセラピー犬1頭(介助犬などの訓練を受けた犬は「匹」ではなく「頭」と数えるそうです)でスタートしたのですが、セラピーの効果は確認できましたし、患者さんやそのご家族からも喜んでいただけたので内容を拡充。現在では専従のセラピストが私を含めて5人(全員が若い女性)、セラピー犬は14頭になっています」