「褒めてほしい、認めてほしい」という若手にどう接するべきか

オーダースーツSADAの佐田展隆社長。
――「動機づけ・衛生理論」は古典的な理論ですが、例えば給与が不満だからといって、それを上げても必ずしも満足につながらない、ということを明らかにしたもので、私たちもいまだによく使います。最近「承認欲求」という言葉もよく耳にするようになりましたが、まさに人の育成も、「仕事」の「達成」を「承認」されたときに、強い動機づけが得られるということなのだと思います。

【佐田】それはわかりますね。新卒入社の人と話していたときに「もっと褒めて、認めてもらいたいんです」と言われて驚いたことがあります。まだ入社から数カ月なのに社長から褒められたいんだ!? と。「そういうのは一人前の店長になってからだよ」って言いましたけどね(笑)。就職氷河期を経験した私たちから見ると、いまなら「ブラック」と呼ばれるようなことが当たり前だった時代も経験しているので、つい。

――いま新社会人の人は、少子化を背景に子どものころから「承認」をしっかり得て育って来ていますから、受験戦争や就職氷河期を体験した団塊ジュニア世代から見ると、求める環境は大きく異なっています。私たちもそういう環境で育ったら、きっと「もっと褒めて」って言うようになっていたはずです。なので、彼らが悪いわけではない、ということには注意が必要です。

【佐田】そういう人たちを私たちがいかに成長させていくかというのは、社会としての課題でもありますね。

――いまはSNSもあってコミュニケーションの頻度も高く、「いいね!」を押してもらうのが当たり前だということもあります。もちろん「承認」=褒められる、ではありませんが。佐田さんはFacebookはされていますか?

【佐田】やっています。もっぱら経営者仲間でのつながりで利用しているのですが。投稿内容はわたしのブログにも再投稿しているので、わたしの動向をスタッフの皆さんは把握しているとは思います。

――社長ブログのなかでスタッフ向けのメッセージを織り交ぜたり、Facebookでも例えば、店長やスタッフのグループを作って、そこに「みんなお疲れ様」といったメッセージを投稿するという方法はあります。佐田さんから見た「この接客がすごい」というエピソード……それはSADAにおけるものでもよいし、どこか旅行されたときに出会ったお店で、というものでも良いのですが、そういった価値観を共有するというのは効果があります。

「褒めてほしい」若手の気持ちがわからない

【佐田】たしかにそれは必要ですね。それにしてもこの世代間ギャップは大きなものがありますね……。満足要因として「昇進」が挙げられていますが、これもどこまでシステム化するか悩ましいところです。昇給の基準となるものですから重要ではあるのですが。まだ社員は100人規模なので、アナログにマネージャが部下を見て、各々の判断で人事考課を行うということでもなんとかなってはいるのですが。

――たしかに人数が多いと、基準を一定にしないと不公平になるので、昇進のアルゴリズムを明確にしていますね。一方で、人数がそれほど多くない場合は、手間とコストをかけてまで仕組みを整える必要はない、というケースがほとんどです。さらに、先進的な企業では「年次の人事考課を止める」という事例も出てきています。つまり評価や指導は、その都度、その場でやったほうが良いという考え方です。半年前のことを思い出しながら評価するというのは合理的ではないというわけです。そういう意味では御社がされているスタイルに近いですね。