エグゼクティブコーチングとは?

経営者はしばしば、会社経営において大きな判断を迫られる。グローバル化が進み、社会の変化が速くて先が見えない現代、経営者にとって、不透明な要素が多い中で経営判断を行うのは非常に難易度が高い。しかし経営者は基本的に孤独なものだ。誰かに相談したくても、相談する相手がいないので1人で判断を下すしかないというシチュエーションは多い。

アイディール・リーダーズのエグゼクティブコーチ、丹羽真理氏。

「エグゼクティブコーチング」という言葉をご存じだろうか? 一般的なコーチングとは異なり、悩みや迷いを抱える経営者とコーチが共に、自らのビジョンや原点を探り、先の見えない時代に本質的な「解」を見いだそうというものだ。経営者とコーチは基本1対1で対峙し、時間をかけて話し合う。経営者の自己探求と意思決定支援を手助けするコーチはもちろん、プロフェッショナルであることが求められる。

本連載では、実際の企業経営者がコーチと話しあい、エグゼクティブコーチングを行うセッションの模様を詳しくお伝えする。普遍的な課題と、その解決の糸口は多くの読者にも共感できるものになるはずだ。第1回となる今回エグゼクティブコーチングを受けるのは、オーダースーツ販売で急成長を続ける「オーダースーツSADA」を展開する、株式会社佐田の佐田展隆社長。同社は大正12年創業の老舗だが、東日本大震災直後は業績低迷に苦しんだ。4代目社長として再建に奔走した佐田氏が、いま抱える悩みとは?

オーダースーツSADA、佐田社長の悩み

「オーダースーツSADA」を展開する、株式会社佐田の佐田展隆社長。
――初回1万9800円でオーダースーツを提供し急成長しているということで、「ガイアの夜明け」などメディアの注目も集めているオーダースーツSADAですが、社長の佐田さんには実は悩みがあるとか?

【佐田】はい。2011年の震災後に社長に就任し、経営再建に取り組んできました。お陰様で「生きるか死ぬか」という状態から、直営工場を持ち、店舗数も順調に増えています。

そんな中、SADAでは従業員満足度向上の為の施策検討を積極的に進めています。でもそのためには、超えなければいけないハードルがありそうなんです。アパレル業界はもともと労働集約的な側面があります。例えば個人のノルマであったり、サービス残業であったりですね。SADAでは、そういった部分はかなり改善が進んだのですが、さらに社員の満足度を上げて長く勤めてもらえるようにできればと。従業員の満足がお客様の満足にも直結すると思うからなんです。もう1つは、これも従業員満足度とひも付くのですが、社員に成長の機会を明確に提供していきたいということです。

――たしかにアパレル業界は労働環境が厳しいとよく聞きます。そんな中、ここまで改善をされてきた佐田さんが、社員に提供したい成長の機会とは具体的にどういうものですか?

【佐田】一言でいえば「デキる店長になってほしい」ということですね。この業界における人材育成はOJTに依っている部分が大きいんです。どの店長のもとで経験を積むかで、ずいぶん差がつきます。外部の研修機関の教育プログラムも用意してあり、通った分の残業代も支給しているのですが、皆忙しいですからなかなか通ってはくれない。

今後は業績に応じて決算賞与も出していきたいと思っています。そのためにはまず売上が上がらなければならない。そして、その売上はデキる店長が大勢いて、彼らのもとでしっかり経験を積み、客単価を上げることができるスタッフが育つことが絶対条件なんです。SADAの場合「オーダースーツ1着1万9800円」がウリですから、強引に商品価格を上げていってしまうとお客様の期待を裏切ることにもなりかねません。お客様に納得の上で単価を上げていくために、必然的にスタッフ一人一人の販売能力を高める必要があるのです。具体的には、正確な採寸をテキパキと行なえるようになる、とか、お客様の属性を見極めてアイテムを提案するといったことですね。

――社内では研修はされないんですか?

【佐田】採用後、1~2カ月は旗艦店で集中的に研修はおこなっていますが、その後、各店に配属されたあとはOJT中心ですね。最低限のマニュアルはありますが、採寸1つとってもそれだけでは表現しきれない仕事にはなってしまいますので。例えば同じヌード寸の人が居たとしても、同じサイズのスーツを提案すればそれで満足を得られるわけではないのです。下手をするとクレームにすらなります。なぜなら政治家の方と水商売をされている方では、望ましい上がり寸法が異なるんです。しかも、どんな仕事をしていらっしゃるか、直接聞いてはいけないケースもあります。したがって接客をしながら、相手を見て、会話の端々から見極める必要があるんです。

――最近「接客スキルが高まったな」と感じるお店、あるいはそこで働くスタッフはいますか?

【佐田】記事の中では「誰」とは言いにくいのですが(笑)、とても良いお店や、店長はいます。そこは新卒採用者の多くを配属させる店舗でもありますが、教育も行き届いていると思います。