良い店舗は良い店長がつくる

――それはどうして良くなった、と感じられたのでしょうか? 他の店舗と何か違いがあるはずですよね?

【佐田】やはり店長でしょうね。店長が店の雰囲気を作ってしまいますから。突き詰めれば人格とか人柄ということになってしまうんですけれども。

――どういう人柄がその雰囲気に結びついているのでしょうか?

【佐田】個々に挙げていくと結構大変です。ただ総体としていえば、部下から見て尊敬できる、○○さんのようになりたいと思えるような人格を備えている、ということでしょうね。店長を任されるということは、接客・採寸のスキルは一定水準を満たしているはずです。でもそれだけではないんですね。自分が売りやすいお客様を気付かないうちにえり好みしていたり、クレームを頂いたときに右往左往してしまったりする、あるいはそもそもSADAという会社に愛着を持ってくれていないと、それは部下に伝わってしまい、彼らから見て尊敬できない、ということになってしまいます。そういう店長が担当する店は、どうしても雰囲気が悪くなってしまうのです。誰に言われるでもなく、店の中のちょっとした部分を改善するとか、目に見えないことの積み重ねが良い店づくりにつながっていきます。そういう意味でもその店の評価は、ほぼ店長で決まってしまう、と言えますね。

オーダースーツSADA。1万9800円からスーツを仕立てることができる。
――SADAの全37店舗のうち、佐田さんがそういう意味で合格点をあげられる店長は何人くらいおられるでしょう?

【佐田】ここ3年ほどは新規出店を急いで来ました。そんな中、店は回せるけれども部下の育成までは……という人がまだほとんどではないでしょうか。これからは伸びてきてくれると信じていますが、現状は満点を付けられる店長はまだ数人というのが正直なところです。アパレル販売未経験の人を採用することも多く、偶然デキる店長を採用できるということはまず滅多にありませんから、やはり育成できる店長とその環境を生みだしていくことが大事なんだと思います。

社員のモチベーションをどう上げる? ~ハーズバーグ「動機付け・衛生理論」

――佐田さんの悩みは、社員の育成とモチベーションということになりそうですね。ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」はご存じですか?
アメリカの臨床心理学者・ハーズバーグは、人間のモチベーションについて研究し、これを経済的な欲求(衛生要因)と心の奥にある向上心を満たす欲求(動機付け要因)の2つに分けた。(出典:「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」2003年4月号)

【佐田】はい。実は現場からの声でこの「衛生要因」の部分への不満が多かったこともあり、底上げを図りたいと思っていたのです。その上で「動機付け要因」を高めていきたいと考えています。