人工知能は現代の「金鉱」だ

人工知能というと、最先端の科学技術というイメージがあり、これを搭載した高機能ロボットなどを思い浮かべるかもしれない。だが人工知能のインパクトは、もっと生活に根ざしたところから顕在化してくるかもしれない。

日本のメガバンクはすでに、顧客向けのコールセンターに本格的に人工知能を導入する準備を進めている。顧客対応に人工知能が用いられた場合、ベテランのコールセンター要員が持つ価値は半減してしまう。人工知能のサポートがあれば、経験が浅い要員でもベテラン同様の対応が可能となるからだ。

近い将来、企業の営業部門には人工知能を使った営業支援システムが導入されるだろう。人工知能は営業マンのメールや提案資料、電話での会話などをモニタリングし、営業マンの顧客対応や提案資料にダメ出しをすることになる。

つまり人工知能時代における企業の業績は、社員の能力よりも、人工知能をどれだけ上手に使いこなせるかで決まってくる。言い換えれば、人工知能の「活用力」がこそが、今後のビジネスにおける「社員力」というわけだ。

これは人工知能がもたらす影響のごく一部であり、今後はあらゆる産業や業界にこうした動きが波及してくる。人工知能時代には、関連技術をどの企業が開発するのかということに加えて、どの企業が関連技術を上手に応用できるのかも重要な視点となるだろう。

現在の米シリコンバレー近辺は、1800年代半ばにゴールドラッシュに沸いた場所でもある。ゴールドラッシュで一番儲かったのは、金鉱掘りではなく、彼等にジーンズを提供したリーバイ・ストラウス(リーバイス創業者)であり、雑貨を販売したスタンフォード(実業家でスタンフォード大学の創設者)だったという笑い話がある。人工知能は現代の「金鉱」ともいえる存在だが、実はその周辺にビジネスチャンスが隠れているのかもしれない。

加谷珪一
東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社を経て投資ファンド運営会社で企業評価や投資業務を経験。著書『お金は「歴史」で儲けなさい』など。
 
(PIXTA、getty images=写真 大沢尚芳=撮影)
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