短期投資よりも長期投資のほうが「安全」というウソ
私は、「デフレの中では投資よりも貯蓄」と言い続けてきました。なぜなら、デフレの中では現金の価値が上がるからです。また、できるだけ投資を勧めないように心がけてきました。
しかし、実は私自身は投資が大好きで、投資歴も30年になります。その投資歴を通してたどり着いた、ひとつの真実。それは投資とは「ギャンブル」だということ。
今、「投資=資産形成」であり、投資をしなければお金が増えずに将来が大変になるというようなことがまことしやかに言われています。
でも、投資をしなくては将来が大変になるような人は、本当は、投資などしてはいけない。なぜなら、なけなしのお金を投資につぎ込むことになってしまうから。
もちろん、それが目論見どおりに大成功して増えればいいでしょう。しかし投資には、減るリスクもあります。なけなしのお金を目減りさせてしまったら、将来はさらに大変になり、にっちもさっちもいかなくなるかもしれません。
ここで断言をしておきますが、投資をして良い人とは、「失ってもいいお金を持っている人」。でも普通のご家庭の多くは、一銭たりとも失っても良いお金などないはず。ですから、私は「投資より貯蓄」と言い続けてきたのです。
そんな私が、7月10日に、中央公論新社から『ちょい投資』という本を出しました。
いま投資の本を書こうと思ったのは、投資をしたいという人が増えているから。しかも、そういう人たちに限って金融機関のカモになり、コロコロとお金を巻き上げられている。その様子を見て、金融機関に金を巻き上げられないようにするための、正しい投資本を書かなくてはいけないと思ったのです。
たとえばみなさんは、「長期投資」という言葉に騙されてはいませんか?
投資信託などを買う時に、よく言われるセールストークが「長期投資なので、老後も安心です」。でも、本当に短期投資よりも長期投資のほうが安全と言えるのでしょうか。
投資の世界では、不確実な状況が増えれば増えるほど、不安定要素が増え、リスクは高くなっていきます。たとえば、1週間後のことなら、よほどの天変地異が無い限り「まあ、こんなものだろう」と推測できますし、それなりに手を打つことができるでしょう。しかし10年後となると、世の中がどうなっているのか見当もつきません。まして、20年後、30年後のことなど、神様でもわからない。