運用している人は、長期投資など頭に無い

目先の短期投資よりも長期投資のほうが不確定要素は増える。それはつまり安心どころかリスクが高くなるということになります。

ところが、銀行や証券会社は「長期投資の商品ですから、老後にむけて安定して資産を殖やせますよ」などと無責任なことを言って、投資信託などを売りつけているのです。

さらに言えば、あなたが投資信託を買う時、営業マンから話を聞いてはいないでしょうか。確かにその営業マンは、純粋に長期投資のほうが安全だと信じているのかもしれません。では実際に投資信託を運用しているファンドマネジャーはどうでしょう。

まず彼らの中に、10年後を考えた投資信託を金融商品として組み込んでいる人はいないと思います。なぜなら、彼らは、運用実績を3カ月ないし6カ月ごとに評価されています。その短い期間で成績が悪いと何らかのペナルティーが課せられるし、外資系などでは無能の烙印を押されてクビになるケースもある。つまり運用している人が、長期的な展望での投資など考えられないような環境に置かれているのです。

ではなぜ「長期投資なので安全です」などと言うのでしょうか。それはズバリ、売りやすいから。「長期」という文句が「将来が不安」という心理につけ込めるからです。

しかも、たとえ損が出て怒鳴り込まれても、「これは長期投資の商品ですから、いずれ良くなります。もうちょっと待ってください」と言い訳できる。その言葉を信じて待っているうちに、販売した当人は配置換えや転職で、その店からいなくなることでしょう。

「長期投資だから安心」と言いますが、それが誰にとっての「安心」なのか、いま一度、考えてみてください。そして、あなたの「安心」だけを考えたのが何を隠そう、今回執筆した『ちょい投資』です。是非書店店頭でお手にとってご覧ください。

荻原博子(おぎわら・ひろこ)
1954年生まれ。経済ジャーナリスト。経済事務所勤務後、82年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。88年より、女性誌『Hanako』(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌に女性向けの経済・マネー記事を連載。家計経済のパイオニアとして、難しい経済やお金の仕組みを生活に根ざしてわかりやすく解説。バブル崩壊直後から、地価の下落やデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛を提唱し続けている。『貯め込むな! お金は死ぬ前に使え。』(マガジンハウス)『荻原博子のどんと来い! 老後』(毎日新聞出版)『ちょい投資』(中央公論新社)など、著書多数。

 

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