子どもには嘘よりも正直に話したほうがいい

石田智美さん

「まず、悟君にとって、病室が怖い場所、嫌な場所にならないように、お父さんの部屋で悟君が遊べるものを持ち込むことを提案しました」(三浦さん)

すると悟君はお父さんの病室内で遊ぶようになりました。しかし、やがて高志さんは症状が悪化し、意識のない状態が続くようになります。美穂さんはこの頃から悟君を高志さんに会わせることをためらい始めました。しかし、三浦さんは「この状態のお父さんを知らずに、次に見たお父さんが亡くなった後だと、将来、悟君が“もっと○○したかった”などと後悔することになるかもしれない」と思い、美穂さんに、悟君にも意見を聞いてみるようアドバイスしました。

悟君は「お父さんに会いたい」と言い、高志さんの意識がない状態でも、画用紙に手形をつけるハンドペイントなど、病室で親子が一緒にできることをしました。悟君はできあがった画用紙を、枕元で高志さんに説明したりして過ごしました。

悟君には、このとき、意識はないもののゼーゼー呼吸をしている高志さんが苦しそうに見えたようでした。そこで三浦さんは悟君に、「お父さん苦しそうだけれど、痛みがないようにお薬を使って眠っているのよ」と声をかけました。

悟君は「お薬なんて使わなきゃいいのに」とつぶやきました。お薬を使っているからお父さんとお話ができないと思ったからです。三浦さんは「そうだよね、でもお薬使っていないと痛みが出ちゃって、それは今のお父さんにとってはつらいから、お薬は大事なんだよ」と説明しました。悟君は理解したのか、うなずいたそうです。

それから数日後、高志さんは息をひきとりました。後日、美穂さんは三浦さんに「あのとき、大人だけの判断で決めてしまわず、悟に尋ねて、夫と会わせ続けておいてよかった」と話したそうです。

石田さんは、子どもには嘘やごまかしよりも、正直に話したほうが、後々、子どもにとって良い結果になることが多いと強調します。

「子どもは年代によって心の成熟度が違いますし、個々に理解のスピードも異なりますから、子どもの発達年齢によってこちらの対応も変えています。

でも、がんになったことを『ただの病気よ』としか説明していなければ、子どもは『どうして薬を飲んでいるのに治らないの?』、『自分も病気になったら、あんなふうに髪が抜けてしまうの?』と疑問を持ち、やがて『怖い』と思ってしまうことがあります。学童期や青年期になると自分で調べたりもできますから、しっかり病名を伝え、ガンといってもいろいろな種類があることや治療法も異なることを説明してあげます。最初は戸惑うかもしれませんが、子どもなりに理解しようとし、時間がかかっても事実を受け入れ、状況に適応する力が子どもさんにはあるからです」