子どもは死を理解し受け入れられるようになる

死をどう説明するかについても、その大切さを二人は訴えます。小さい子どもに「ママはお星さまになったの」「パパは神様のところにいったのよ」などと言えば、「パパを連れて行った神様は悪い人なんだ」と思うようになったり、「ママはいつお星さまから帰ってくるの」と疑問に思ったり、「眠っているよ」と言えば「いつ起きるの?」と言葉を額面通りに受け取るからです。

「小さい子は“死”の観念がわからないので、私たちは死ぬとはどういうことかをお話しします。親御さんの死が近いことで、親御さんの居場所が子どもにとって怖い場所、嫌な場所、居心地の悪い場所にならないようにしなければなりませんから、子どもにとって安全だと感じられる場所づくりに重点を置きます。病室から出たり入ったりしてもいいし、遠くから見ていてもいい、という自由があることを知らせます」(石田さん)

自由があるとわかると、子どもは安心するようになるものなのだそうです。

また、時間が限られているということ、今やりたいことがあるなら今のうちにしておいたほうがいいということも子どもに伝えます。ただ、最終的には本人の気持ちが大切なので、無理強いはしません。本人が安心してそこまでできるようになるよう、環境を整えるのがCLSの役目です。

「大人が一方的に『手を握ってあげて』『パパって声をかけてあげて』『遊びに行かないでここ(病室)にいて』などと言うことで、子どもが居心地悪く感じたり、怯えるようであれば、大人が『○○ちゃん(子どもの名前)が来てるってこと、パパもわかってるよ』などと言って見守ってあげるといいでしょう。私たちは『お父さんに絵を描いてあげようか』といって廊下に連れ出したりします。大人でもつらい状況を子どもは敏感に感じ取っていますから、とにかく、子どもに無理をさせないことが大切です」(石田さん)

死については、大人が想像もしない、子ども独特の受け止め方があると三浦さんは言います。

「子どもは自分中心の世界で生きているので、まったく関係なくても、『自分のせいだ』と思い込んでいることがあります。たとえば、『自分がお母さんの言うことを聞かなかったから、お母さんが病気になってしまった』とか『ママなんか大っ嫌いと言った次の日に病気になった』とか。そして自分を責めているのです。だから、『ママのせいでもパパのせいでも○○ちゃん(子どもの名前)のせいでもない、誰のせいでもないんだよ』と優しく言ってあげてください。

また、子どもの前で大人が悲しんだり、落ち込んだりしてもかまいません。その気持ちを子どもは受け入れられるからです。子どもが可哀想だからと感情を伏せていると、逆に子どもがそれを察知して遠慮したり、気を遣ったりして、かえって孤独にさせてしまうこともあります。そうなると、何かあっても言わなくなったりします。本人が大人を気遣って学校であったことが言えなかったり、気持ちを隠すことになりかねません」

子ども時代に親を亡くすことは、本人にとっても周りにとっても大変つらいことです。しかし、大人がオープンな対応をとれば、いずれ子どもは理解し、“死”を受け入れられるようになるのだと二人は言います。

三浦絵莉子(みうら・えりこ)
1981年埼玉生まれ。East Carolina 大学、Child Development and Family Relations学部Child Life専攻卒。2004年米国CLS資格取得。浜松医科大学医学部附属病院、磐田市立総合病院にてCLSとして勤務後、現在は聖路加国際病院こども医療支援室に所属。NPO法人「Hope Tree」のメンバーとしても活動中。小児科の子どもたちだけではなく、親が病気の子どもたちやきょうだいが病気の子どもたちも含めた、病院に来るすべての子どもたちへのケアの充実を目指している。
石田智美(いしだ・ともみ)
1975年東京生まれ。上智大学文学部心理学科卒。2001年より米国に留学、教育学修士取得。2005年米国チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)資格取得後、帰国。三重大学医学部付属病院、東京医科歯科大学附属病院にCLSとして勤務後、現在は聖路加国際病院こども医療支援室に所属。病院に来るすべての子どもたちにとって、医療の現場が少しでも怖くなく、大変な中でもプラスの経験となるよう、子どもの目線を大切にしたサポートを目指している。

チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会 http://childlifespecialist.jp/

(取材・構成=田中響子)
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