大局を俯瞰して、「大義」を立てよ
たとえば、外資系製薬会社の国内ワクチン市場参入を促す際は、時間=歴史を100年単位で遡ります。当時は野口英世や北里柴三郎らが世界の感染症の研究をリードしていた。その日本が今やワクチン後進国とまで言われるようではいけない……という具合です。
外資系の参入で風通しをよくし、弱体化した国内メーカーは彼らとの提携を通して技術を吸収し直し、再度一人立ちしなければならない。そのためにも、彼らの参入に協力してくれ、というわけです。
無論、信用できないクライアントからの依頼もあります。三方よしが念頭になく、自己の利益しか考えない相手だとわかれば、当然ですがお断りします。話を丸ごと信じてもいいのか、という慎重な眼差しが常に必要です。
ですから、窓口となる担当者と、長い時間をかけて何回も議論を繰り返し、意思疎通を図ります。実際、相手の会社の真意が必ずしも明確でなくても、その担当者と自分との個人的な関係において、「まさか間違ったことはしないよね」という信頼関係を醸成していくわけです。
結局、我々の起こしたアクションによって世の中がよい方向に変わらなくては、やっているほうも面白くないわけです。
ある課題を鳥瞰的・大局的に捉え直し、大義を打ち立て、唱道することで周囲を巻き込み、問題解決に邁進する。そうした営為を積み重ねていくうちに、いい循環が生まれ、信頼関係もごく自然に築かれていくのではないでしょうか。
▼周囲に信用される「根回し」とは?
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【○】最後は天日に当てる――OPENが基本。人に知られて恥ずかしくない
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【○】一方だけ得する案件はNG――時には依頼客に背き、「三方よし」に導く
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【○】歴史・社会を広く俯瞰し説得――「明治期に世界をリードした○○業界を復活させよう」
1963年、東京都生まれ。86年中央大学法学部卒業。アメリカン大学法律大学院修士号取得。89年より米国ドーシー&ホイットニー法律事務所でロビイストのアシスタント。KPMGワシントン・東京事務所を経て、2005年新日本パブリック・アフェアーズを設立、現職。