たとえばニトリは月次ではなく週次決算を基本にしています。月次では前月や前年と比較するときに、月の日数や曜日の配列で条件が異なってしまい正確な比較ができません。だから週次でやっているのですが、うちの役員クラスは、月曜日に出る決算の数字や状態を見て、どこに問題があり来年のこの週はどう改善するか、つまり問題の発見と分析と改善についてレポートしなければなりません。

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ニトリ22期連続増収増益を達成

その際は「いくら儲かったか」が問題ではありません。業績好調な中でも、機会損失や失敗はあるはずなので、それを金額と状態に直して1年後のレポートをつくるのです。このようにして、私たちは毎週、1年で52週間成長していきます。そうしないと、必ず悪い状態に陥ってしまうからです。

たしかにいまは儲かっています。08年5月以来、6回にわたり値下げをしていますが、粗利は下がっていないし、売り上げが伸びているから利益は出ます。すると、さらなる値下げ原資ができるのです。値下げをしても、お客さんが増えるからまた下げる。いい循環になってきたということです(笑)。

これだけの値下げができるのは、もともと素人だった私たちが工場経営から船の手配や貿易実務まで、仕事を全部手がけているからです。聞いただけで気が遠くなるでしょう? うんざりして、やる気がなくなると思います。

でも、うちのモットーは「一に安さ、二に安さ、三に安さ」です。お客さんにとって1円でも安くするためには、どんな困難であれ乗り越えてみせるという思いです。あくまでも世のため、人のため。儲けるとか、売り上げとか、店舗数なんてことは考えません。どんな苦労も厭わずにやってきました。

工場のあるインドネシアやベトナムは治安もよくないですよ。その中にあって、僕らは戦争をしているようなものなんです。お客さんの暮らしを豊かにするために、命をかけて、僕らは戦場で戦っているようなものですよ。

他社に追い付かれないかって?

たとえば街のレストランでも、流行っている店、おいしい店がありますよね。でもそれはたいてい、他に先駆けて10年前とか20年前から同じシステムでやっている。だから安い値段でおいしい料理を出すことができるのです。場所や形はすぐに真似できても、仕組みを真似るにはやはり10年かかると思いますよ。

※すべて雑誌掲載当時

(面澤淳市=構成 尾関裕士=撮影 ライヴ・アート=図版作成)