一に安さ、二に安さ、三に安さ

<strong>ニトリ社長 似鳥昭雄</strong>●1944年、サハリン生まれ。北海学園大学経済学部卒業後、67年「似鳥家具店」を創業。85年社名を「ニトリ」に変更。2002年東証一部に上場。「夫婦関係と同じように、ビジネスでも見返りを求めない。儲けようとするとお客さんは逃げていく。喜んでもらえればいいのです」
ニトリ社長 似鳥昭雄●1944年、サハリン生まれ。北海学園大学経済学部卒業後、67年「似鳥家具店」を創業。85年社名を「ニトリ」に変更。2002年東証一部に上場。「夫婦関係と同じように、ビジネスでも見返りを求めない。儲けようとするとお客さんは逃げていく。喜んでもらえればいいのです」

2006年ごろ大騒ぎになり、08年になればもう、いつ破裂するかわからない……。これはアメリカの建売住宅の価格を現地で「定点観測」してきた結果、05年に立てた私なりの予想です。つまりサブプライム・ショックと、その後の世界同時不況について正しい見通しを持っていたのです。おかげでニトリは、不況がくる前に余裕資金を手当てし、大胆な値下げに踏み出せました。

どうしてそんなことができたのでしょうか。

一つは社長である私が必ず「現場・現物・現実」をもとに市場調査を行うようにしているからです。住宅関連だけでなく、衣食住のすべてを見、買い物をします。社員に行かせるだけではいけません。経験と鋭い感性をもったトップまたはトップに準じる立場の人が、アメリカならアメリカの現場を見る。そして10年先を見通さなければいけないのです。

将来を見通すには、現時点の調査結果を原理原則に照らして予測する必要があります。具体的には、日本の住宅価格の動向とバブル崩壊との関係をグラフ化し、それをアメリカの事例に当てはめる。人間が絡んでいるできごとであれば、国を問わず必ず同じようなパターンで進行します。経験則を馬鹿にしてはいけません。

そして最後に生きてくるのは、何十年も努力し磨いてきた「勘」ですね。

私たちの社内では、こういう訓練を日常的に行っています。いつも注意しているのは「ビジネスである限り、必ず数字を入れて会話をしなさい」ということです。私たちの仕事は論理と科学で成り立っているからです。

正確な日時や金額など数字の入っていない会話は、ビジネスの会話ではありません。それは遊びです。

上司が「あの件はどうなっているか」と質問すれば、部下は必ず「何月何日までに値段はいくらで、こういう状態で入荷します」と答えなければいけません。なぜなら、それが人を成長させる唯一の道だと思うからです。

だから、うちの役員・社員はどこへ行っても数字や論理で表現しなければなりません。