私自身は、個人的に投資で儲けようと思えばいくらでも可能でしょう。相場勘は比較的いいからです。野村証券のニューヨーク支店勤務時代、アメリカで日本企業の株を売り込む仕事をしていましたが、私が毎朝書くリポートは機関投資家やポートフォリオマネジャーに「よく当たる」と高く評価されたものです。しかし、私は基本的に、お金は自分の身に付くものしか身に付かないと考えています。だから、私利私欲で必要以上に大金を儲けようと齷齪する気はありません。
そして、身に付けたものは、できるだけ吐き出すよう心がけています。
たとえば、私財を投じてのSBI子ども希望財団や慈徳院の設立、SBI大学院大学の設立などを通じてです。出身大学の慶応や2年間留学したケンブリッジ大学からの寄付金の要請には、恩を還元する気持ちで応じました。
投資市場の仕組みは義務教育で教えるべき
こういう私ですが、一般のビジネスマンたちに向かっては次のようにアドバイスしたいと思います。
それは……お金のこと、資産運用に関して熱心に勉強して正しい知識を身に付けることは、けっして卑しいことではない。それどころか、生きていくうえで非常に大切だということです。
欧米ではごく普通の人たちが金や株、債券に投資し、それによって生活設計を組み立てています。ところが、日本人は、お金があればまず銀行に預けてきました。投資市場の仕組みを、社会人の持つべき常識として、本来、義務教育のうちに教えるべきなのに、日本ではそれを全く避けてきました。
しかし、いまや日本も「貯蓄から投資へ」の時代。多様化した金融商品を自己責任で選び、大幅に延びた老後を自分で設計しなければならない時代です。投資のセンスを身に付け、それを磨くことが求められています。
私は関西の生まれですが、船場ではどんな金持ちでもモノを買うときは「勉強足らんのじゃないの?」と、値切るのが当たり前。小さいときから、そういう交渉のなかで育ちました。モノの価値を見極め、いい意味でお金にこだわる。そのことは大切だと思っているのです。
こう語る北尾氏に、以下、資産の増やし方に関する実践アドバイスや個人的体験を尋ねた。