“第4のメガバンク”を目指しTOBへ

9月9日、北尾吉孝氏が率いるSBIホールディングス株式会社(SBI)と、その完全子会社であるSBI地銀ホールディングス株式会社は、新生銀行に株式の公開買い付け(TOB)を開始すると発表した。今回のTOBによって、“第4のメガバンク”を目指し地銀に出資してきたSBIは新生銀行を傘下におさめたいと目論もくろんでいる。

それに対して、新生銀行は独自路線を歩みたいと考えているようだ。新生銀行は17日に取締役会を開き、買収防衛策として"ポイズンピル"の導入を決議した。また、SBIのTOBから助けてくれる“ホワイトナイト”を模索している模様だ。今後の展開次第では、SBIは新生銀行に対して敵対的TOBを仕掛ける可能性もありそうだ。

新生銀行本店ビルエントランス
新生銀行本店ビルエントランス(写真=Wikipedia)

企業統合などで重要なポイントは、TOBが事業運営の効率性を高め当該企業の企業価値を高めることになるか否かだ。新生銀行の業績等を見ると、現時点でそれは予想が難しい。ただ、SBIが新生銀行株に約4割のプレミアム(上乗せ価格)をつけたことは、新生銀行の既存株主には魅力に映るはずだ。今後の主要株主の判断やホワイトナイトの出現など、紆余曲折うよきょくせつ、これからも色々なことが起こりそうだ。その動向から目が離せない。

SBIはなぜ新生銀を狙ったのか?

新生銀行の事業運営は、経営陣が思い描いたようには進んでいない。最大のポイントは、同行の収益力が持続的に高まっていないことだ。SBIの発表資料を見ると、過去7期の多くの年度で新生銀行の純利益は減少し、実績が計画を下回る年も多い。純利益が減少傾向にあるということは、株主の価値が増えていないことを意味する。

SBIの2021年4~6月期の決算説明資料には、同社が保有する新生銀行の株価下落によって、142億円の評価損の計上が記載された。収益力の強化が難しい状況下、新生銀行は前身である旧日本長期信用銀行に注入された公的資金の返済もおぼつかない。これまで、新生銀行は収益力を強化するため、SBIやマネックス証券などと提携してきたものの、今のところ、目立った効果は実現できていないのが実情だ。