数を追うだけの政策はいずれ壁にぶち当たる

これを裏付けるように、内閣府が8月15日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値で、訪日外国人観光客消費は前期比4.5%と3年半ぶりにマイナスに転じた。購買品の中心が爆買いの象徴だった宝飾品や腕時計といった高額品から化粧品や医薬品、日用品など価格の低い消耗品に移行していることも、爆買いが沈静化している要因となっている。

消費財メーカーもこの影響を受け、国産時計大手の収益を大きく圧迫している。シチズンホールディングス、セイコーホールディングス、カシオ計算機の3社の4~6月期はいずれも営業利益が前年同期から2桁の減少に追い込まれ、シチズンHDは17年3月期通期の最終利益見通しの下方修正を迫られた。インバウンド消費に過剰な期待を寄せてきた関連業界は思わぬ“落とし穴”にはまってしまった。

政府は20年に2000万人を掲げた訪日外国人観光客の目標の年内達成が確実となったことから目標を一気に4000万人に倍増し、「観光先進国という新たな高みを実現する」(安倍晋三首相)とインバウンド需要拡大を成長戦略に位置付ける。確かに、7月の訪日外国人観光客は前年同月比19.7%増の229万7000人と月間として過去最多を更新し、増勢を維持している。20年開催の東京オリンピック・パラリンピックの効果も十分期待できる。

しかし、円高基調の定着もあり、この勢いがこのまま維持できるかは不透明だ。さらに爆買いが鳴りを潜め、さらにインバウンド消費も「モノ」から「コト」に移行するなど変質を遂げており、数を追うだけの政策はいずれ壁にぶち当たる可能性は否めない。

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