▼住まいと街の解説者 中川寛子氏
老いて本当に暮らしやすい自治体とは
地域の福祉を担う基礎自治体の財政は、少子高齢化に伴って厳しさを増しています。20年後にいまと同じ行政サービスが維持される保証はなく、縮小している可能性が高い。私たちが高齢になったとき、頼れるのは行政サービスではないかもしれません。重要なのは住民の参加意識です。住民が行政サービスの一方的な受益者ではなく、ボランティアやNPO活動を通して参加者となって地域を支える。そういった環境が整っている町なら、将来の財政にかかわらずサポートを受けやすいはずです。
たとえば千葉県千葉市は、道路の不具合やごみの不法投棄などを見かけたらスマホから写真付きで通報できる「ちばレポ」という制度をつくりました。市民の力を活用することで、これまで役所の目の届かなかったところまでカバーされ、巡回や緊急対応のコストが削減されて行政サービスの維持につながるわけです。
千葉市は戦略的に市民協働を行っていますが、そこまでいかなくても、民間の活動をサポートしている自治体は数多くあります。見分け方としては、公営・民営にかかわらず地域にNPO支援センターがあるかどうか。
町の規模も重要です。内閣府「一人暮らし高齢者に関する意識調査結果」(平成26年度)では、都市の規模が多いほど幸福度は高かった(グラフ参照)。これはおそらく、徒歩圏内にさまざまな施設が揃っていること、人の密度が高くて新たな人間関係を築きやすいことなどが要因として考えられます。
以上を踏まえると、住民の参加意識が高く、ある程度の規模のある町が有望です。この手のランキングで上位に来る市区町村ではなく、あえて穴場的な街をピックアップするとしたら、千葉県流山市、東京都調布市、23区では豊島区や足立区もおすすめです。(談)
1. 東京都・台東区
2. 東京都・荒川区
昭和を感じる人気エリア「谷根千」地区は、センシュアス・シティ首位の文京区と台東区にまたがり、荒川区に隣接している。賃料水準が相対的に低く、生活圏が重なる台東・荒川両区は穴場といえる。
●中川寛子氏が勧める「穴場」5都市
1. 千葉県・千葉市
2. 千葉県・流山市
3. 東京都・調布市
4. 東京都・豊島区
5. 東京都・足立区
少子高齢化と自治体財政の逼迫で、行政サービスを受けるだけではなくこれからは街の運営に「参加する」意識が問われる。そうした取り組みが進んでいる自治体に注目すべき。