この指標のトップスリーは文京区(93.1)、台東区(78.1)、大阪市北区(75.9)。文京区と台東区は「お寺や神社にお参りをした」、文京区と大阪市北区は「馴染みの飲み屋で店主や常連客と盛り上がった」という項目の偏差値が高かった。
「共同体への帰属といっても、今回の調査で想定したのは地縁・血縁に根ざした濃厚な関係ではなく、日常生活の中での緩やかなつながりです。たとえば地域のお寺や神社との関係も、散歩中に天神様の前を通りかかったら軽く手を合わせるといった程度のつながりがちょうどいい。飲食店でいうと、チェーン店ばかりの街は偏差値が低い。個人経営のお店が元気な街ほどコミュニケーションが生まれて、センシュアスな魅力も増します」(HOME'S総研所長・島原万丈氏)
老後の暮らしに深く関わる2つの指標では、いずれも文京区が首位だった。この他、「ロマンスがある」「機会がある」では大阪市北区が、「街を感じる」では武蔵野市が最上位だった。
ここで気になるのは生活に関わるコストの問題だ。上位の街は従来型の人気ランキングでもおおむね上位に入る。当然、住宅価格や賃料が高い。結局はお金持ちでないと、老後もイキイキと暮らせる街には住めないのだろうか。
賃料は安くても魅力的な街とは
だが、決めつけるのは早いようだ。HOME'S総研で調査・分析にあたった担当者は次のように明かす。
「分譲住宅価格や賃料水準を決定するのは、生活利便性や交通利便性、居住快適性、安全性といった要素です。ただ、これらの要素は、人との出会いやエンターテインメント性を測るセンシュアス指標と対極の位置にあり、直接は関係しません。そのため文京区や大阪市北区、武蔵野市のように利便性とセンシュアス度の両方に優れた街もあれば、なかにはセンシュアス度が高いわりに利便性が低い街もある。後者は分譲住宅価格や賃料がリーズナブルなので狙い目でしょうね」
具体的に該当する街をあげよう。台東区はセンシュアス度が総合6位、23区に限れば3位と高水準。ところが賃料(築10年のシングル向け賃貸マンションの平均。HOME'S総研調べ)は23区で20位だ。同様に荒川区は総合16位、23区内で8位だが、賃料は23区内21位。どちらもセンシュアス度は高いが、賃料は下から数えたほうが早い。どうしてこのようなギャップが生まれるのか。島原氏の分析はこうだ。
「下町の台東区と荒川区は、文京区に比べてブランド力で劣ります。ただ、昔ながらの商店が数多くある谷根千(谷中・根津・千駄木)エリアで文京区と隣接していて、生活圏は実質的に重なっている。経験できることはほとんど変わらないのに賃料が安いのだから、穴場といえます」