では、総合ランキングを見てみよう。1位はダントツで東京・文京区。2位は大阪市北区、3位は東京・武蔵野市。トップ50位には、東京23区のうち13区、大阪は24区のうち(調査対象は21エリア)8エリアがランクインした。この結果をどう受け止めればいいのか。
「全般に都心部が多いですが、都心部の中でも上位に来るのは住宅やオフィス、商店や飲食店が比較的狭いエリアに密集している街です。集積度が高いと人と人との交流が生まれやすく、それが刺激的な体験につながっているのでしょう。一方、家に帰って寝るだけのベッドタウンや繁華街ばかりの街など、街の機能が偏っているところはスコアが低くなります」(HOME'S総研所長・島原万丈氏)
各指標の偏差値にも注目だ。どの指標も重要だが、気になるのは「歩ける」。高齢になると視力が低下するし反射神経が鈍くなり、車の運転が難しくなる。また、若いうちからいつも歩いていないと、足腰の衰えも早い。歩きやすい街であるかどうかは、老後の暮らしを考えるうえで欠かせない要素だ。
では、どこが「歩ける」街なのか。高偏差値だったのは、文京区(86.1)、江戸川区(74.8)、横浜市栄区(73.0)。その他の上位も都心部の街が多く、郊外ベッドタウン型の街は総じて偏差値が低かった。
なぜ浜松市は静岡市に勝てないか
「都心部の街が上位に入ったのは、公共交通手段が発達しているうえコンパクトで歩きやすいから。大都市でも、札幌市や名古屋市は車依存型で上位には入りませんでした。車依存型だと偏差値が低くなる傾向は、静岡市と浜松市の差にも表れています。両市は同じ静岡県内の政令指定都市で域内GDPも同規模です。しかし、静岡市が『歩ける』で8位(総合でも12位)なのに対して、浜松市は上位50位に入りませんでした。浜松市は中心部でも車道がたいへん広く、明らかに車中心の街づくりをしています。そのことが影響していると考えられます」(同)
老後を考えると「共同体に帰属している」という指標も軽視できない。会社員は定年退職で会社という共同体から卒業する。行き場を失い茫然自失する人も多いというが、人と人とがつながりやすい街なら安心だ。