さらに、第六の特徴として消費者へのアプローチは特定少数志向ではなく不特定多数志向となっている。これまでのユーザー・イノベーション論ではリードユーザーと呼ばれる特定少数のユーザーを探し出すことに注力されてきた。

それに対してクックパッドのアプローチは広く不特定多数に対して商品使用場面での知識創造を期待するアプローチを採用している。そこで生み出される知識に対する評価も群衆によるものを尊重する。

第七の特徴は、消費者を投稿者、積極的模倣者、単なる閲覧者のように三層構造で理解し、知識創造(アイデアの投稿)とプロモーション(アイデアの閲覧と利用者間の口コミ)を統合している点である。

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クックパッドにおける需要拡大

商品使用に関する知識創造を行う革新者が利用者全体に占める割合は高く見積もって10%と決して高くない。

そこで、その数%の消費者が行う知識創造から良質のものを選別するプロセスを他の利用者に託し、可視化することで消費者間の情報伝達を活性化しているのである。

こうしてクックパッドは、「つくれぽ」によって投稿案とそのアイデアに対する群衆の評価・人気度を結びつけ、消費者によるイノベーションと当該イノベーションのプロモーションを統合している。

投稿と閲覧・評価を可視化し、連動させることで群衆による民主的プロセスを通じた当該商品に対するイノベーションとそれに対する需要の拡大再生産を実現しているのである。

メーカーが製品開発しユーザーが用途開発とプロモーションの一部を担い、クックパッドがそれを支援する。そこでは知識共創の新しい形が胎動しはじめているのである。

(注)ここで紹介した内容は一橋大学藤川佳則准教授と前出の堀口悟史氏との共同研究の成果である。

(図版作成=平良 徹)