他人の幸せを素直によろこべるがん闘病者たち
どうなることかと思われた、がん闘病者の方々への電話取材はうまくいったのですが、この仕事をいい方向に進めることができたのは、がん闘病経験がある母のことを話題にしたからです。
母のことを話すと、緊張していた方や、ポツリポツリとしか話してくれない方でも、「よかったですね」と曇り空が一瞬にして晴れるような明るい声になり、みなさんが自分のことのようによろこんでくれたのです。正直なところ、つらい闘病生活を送っている人たちが、ここまで他人の幸せをよろこんでくれるとは思いませんでした。それだけでなく私の健康状態も聞いてくれ、何か心配なところがあると、アドバイスしてくれたのです。
取材をして思ったのは、健康であることが自慢だったのに、ある日突然がんの宣告を受けた人が多かったことです。また、がんを宣告されてから不摂生を後悔しても遅すぎる、ということでした。医療関係の仕事をしている40代後半の胃がんの手術をしたばかりの男性は、「親よりも早く死ぬのは親不孝だ」といって、がんと対峙する覚悟を語ってくれました。そして、健康な日々が送れている人はそのことに感謝し、健康的な生活を心がけてほしい、と強く訴えていました。
私もそうですが、がんの宣告をされていない人は、「健康が大事」ということが頭ではわかっていても、日々の忙しさを理由に「対岸の火事」と捉えがちです。「もはやがんは死の病ではなくなった」といわれていますが、がんにならないほうがいいのは、いうまでもありません。命を取られなかったとしても、つらい闘病生活を送ることは避けられません。
高齢になるほどがんになる確率が高まり、生涯でがんになるのは2人に1人といわれていることを考えると、できるだけ早い段階に、少しでも健康を意識した生活を送るようにしたほうがいい、とあらためて思いました。