「できるのはせめて支持しないこと」
トランプ氏の主な支持基盤は白人の低所得者層といわれている。彼らの多くは金持ちばかりが優遇されることを苦々しく思い、雇用の多くを移民に奪われていることに不満を抱き、将来に不安を持っている。トランプ氏の減税策や極端な反移民政策はそこにヒットしたわけだ。
しかも大富豪のトランプ氏は献金が要らない。これがミソで、トランプ氏の支持層はこれまでに共和党が捕捉してこなかった人々なのだ。党内の支持や献金がなくても選挙戦をリードしているのだから、苦々しく思いながらも共和党の保守本流は手の打ちようがない。「できるのはせめて支持しないこと」と彼らは言う。
現時点でトランプ氏の対抗馬になりそうなのは上院議員のテッド・クルーズ氏ぐらいだろう。しかし、クルーズ氏はサラ・ペイリン元アラスカ州知事よりも始末に悪いガチガチの保守主義者で、支持層は非常に限られている。3番手につけていたルビオ氏は地元フロリダが洪水の増加や海岸線の浸食に悩まされていることに対して何の手も打たず、「地元で何もできないのに、アメリカ全体の操縦ができるのか」という批判もあったが、結局3月15日夜、選挙戦からの撤退を表明した。
共和党のインテリ層からは、「今回は(恥を忍んで)ヒラリーに入れよう」という声まで聞こえてくる。もはや共和党本部も(何らかの原因でトランプ氏が自滅または撤退宣言する以外は)対策の施しようがないのだ。