自分の利益より顧客の利益を優先

顧客は自社のパートナーになってくれる営業担当者を切望している。単なるご用聞きや出入り業者ではなく、有用な情報提供やアドバイスをしてくれる、あるいは困ったときに安心して相談できる営業担当者――。

そんな存在になるには、まず顧客から相談したい相手として認知される必要がある。顧客から相談したい相手として認知されるには、「自分の利益より顧客の利益を優先する営業担当者」でなければならない。

自分の利益を優先する人に相談などしようものなら、強引に売り込まれる恐れがある。顧客が相談を持ちかけるのは、顧客の利益を優先する営業担当者だけだ。

「この人は必ずベストの提案をしてくれる」

そう思われない限り顧客から相談されることはない。そんな存在になるにはまず、売り込むのではなく、顧客の役に立ちたいという姿勢を行動で示す。

顧客に安心感を与える提案の源泉になるのは「顧客情報」だ。これについては、少々説明が必要かもしれない。

商品を売り込むために必要なのが案件情報で、顧客のパートナーになるために必要なのが顧客情報だ。個々の案件に関する予算や要件等の「条件」が案件情報であり、「困っていることは何か」「何をしたいと思っているのか」といった顧客の「状況」に関する情報が顧客情報なのである。

営業担当者の多くは、このふたつを区別せず、案件情報の収集に血眼になっている。しかし顧客情報を把握しなければ、顧客が抱える問題点や課題に到達できず、顧客の信頼を勝ち取る提案などできない。

価格競争に巻き込まれたとき、何も考えず「これで精一杯です!」とギリギリの条件を出すだけの人と、顧客のパートナーになれなかった要因を感情移入して検証し活動を修正する人のどちらが多くの成果を出すか。答えはいうまでもない。

(構成=宮内 健 市来朋久=撮影)