東京・北区の日本交通本社で川鍋に改めてインタビューを行った。
川鍋の役割はここ数年で急速に重みを増している。ジャパンタクシー社長として全国タクシーの開発や普及に努めるだけではなく、14年からは東京ハイヤー・タクシー協会会長(全国ハイヤー・タクシー連合会副会長)として業界全体のために汗をかいている。この2つの新しいミッションに全力を尽くすためには、「日本交通の経営を誰かに任せる必要があった」と川鍋は明かす。そこで浮上したのが知識の名前だったというのである。
「黒船」と戦うには全国タクシーという武器を磨いて、提携会社を増やしていくのが急務である。また、規制当局に働きかけを行うのも、業界のリーダーとしての責務のうちだ。川鍋の判断は理に適っている。
ただ、全国タクシーなどのIT系の仕事に関して、グループのトップが強いこだわりを示すのはなぜなのか。極論をいえば、専門の会社を買収するなりIT業界の人材に経営を任せるなり、川鍋自身が乗り出さなくても済む解決策はあったはずである。
(文中敬称略)
1970年10月、東京都生まれ。創業者・川鍋秋蔵の孫。慶應義塾大学経済学部卒業後、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了、MBA。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2000年、入社と同時に取締役に就任。専務、副社長を経て05年8月、社長に就任。15年10月より現職。
1963年1月、兵庫県生まれ。県立神戸高校、同志社大学法学部卒業。85年、鐘紡入社。2004年5月~09年3月、カネボウ化粧品社長。10年6月~15年6月、テイクアンドギヴ・ニーズ社長。15年8月、日本交通社外取締役。同年10月から社長を務める。