なぜ三木谷氏に野球を提案したか
また、コンサルタントは、上場企業の経営者や経営幹部、ベンチャー企業の創業者などの顧客に、それまで気づかなかった新しい視点からの助言をしていくことが仕事です。
たとえば私は、楽天の三木谷浩史会長兼社長とは楽天創業以前からの長い付き合いで、いまも楽天のM&A関連などのアドバイザーを務めています。9年前には、楽天球団の創設を提案しました。
クレジットカードなど金融事業を始めるにあたり、楽天は「インターネットとふだん接していない中高年層の認知度が低い」という課題に突き当たっていました。そうした世代に大きくアピールするマーケティング手法とは何か。
私が提示したのは「プロ野球球団を保有する」という案でした。その時点では少々突飛だったかもしれません。しかし、せめてそれくらいの意外性がなければ、コンサルタントとしての付加価値はないのです。
とはいえ、どんなに優秀な人でも、すべての分野でプロ並みの知識や技量があるわけではありません。また、斬新なアイデアを提案できるセンスも、一朝一夕に身に付くものではありません。
以上のようなことを自覚させ、トータルなプランを顧客に提示できるように教育していくとどうなるか。
超一流の釣り書きを持ち、最初はプライドばかりが目立った人たちも、やがては周囲と謙虚に向かい合う、真の意味で「仕事のできる部下」に育っていくのです。
1955年、大阪府生まれ。東京大学法学部卒。井上ビジネスコンサルタンツ代表。楽天球団オーナー代行。前パリーグ理事長。