家庭編▼日常生活の満足度が落ち込んだわけ

▽夫婦のありかた、教育の悩みが激変

日常生活の満足度(3)はここ数年で顕著に減少した。家族社会学者の山田昌弘教授に聞いた。

「国の調査を見ても、40代、50代は一番不満の多い世代。親の介護と子どもの進学という、どちらもお金のかかる問題が降りかかってくる世代だからです。収入が高く、正規雇用者の多いプレジデント読者の満足度は、全国平均と比べれば高いほう。それでも満足度が下がっているということは、お金だけでは解決できない、悩みの多い時代に突入したということでしょう」(山田教授)

では、悩みの種は何か。夫・妻への不満(1)1位は「特にない」。

「夫が妻に感じる不満の多くは小遣いの額と家事水準の低下。妻は、自分が働いているか、親と同居しているかなどで不満の内容は変わりますが、夫に十分な収入があって妻が専業主婦なら、不満は生まれにくいんです。家計、金銭関係が不満の上位にきているのは、収入が思うように上がらず、必要な経費は増えるのに、小遣いの額がなかなか上がらないことの表れかもしれません」

子どもに関する心配事(2)も数十年前とは様変わりしている。

「昔は子どもが自分よりも高い学歴を得て、いい暮らしをするのは当然でしたが、今は自分と同じレベルの生活を維持できるかも怪しい時代。だから、進路に悩む人が多いのです。また、昔は親への暴力や夜遊びなどの悩みが上位でしたが、今はひきこもりやいじめなど『内向き』で、解決に長い時間のかかる悩みが増えています」(同)

未婚率も上昇、30~34歳の男性は47.3%、女性は34.5%が未婚だ(平成22年総務省「国勢調査」)。性生活においても驚きの結果が出た(4)。特に30代において顕著に減少したのだ。

「ここ5年間に行われたあらゆる調査で、若い人の性的欲求の減少が指摘されています。原因はまだ研究段階ですが、お見合いや結婚相談所などを利用した『データで選んだ相手』とはセックスレスになりやすいことがわかっています。長く続いた不景気で、経済生活優先で相手を選ぶ人が多かったのかもしれませんね」(同)

小宮一慶 経営コンサルタント
京都大学法学部卒。米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現セントケアHD)を経て独立し現職。名古屋大学客員教授。年100回以上講演し、著書100冊以上。
八ツ井慶子 ファイナンシャルプランナー
法政大学経済学部卒。大手信用金庫を経て、2001年、家計の見直し相談センターの相談員として、FP活動を始める。13年生活マネー相談室を立ち上げる。『お金の不安に答える本』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
山田昌弘 中央大学文学部教授
東京大学文学部卒。同大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専門は家族社会学。「内閣府男女共同参画会議」の民間議員など公職を多数歴任。『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)など著書多数。
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