介護離職の半数は正社員として再就職できず

とはいえ、働いて収入を得なければ生きていけません。

なんとか気持ちを立て直し、働き口を見つけることになります。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が介護離職者を対象に行った「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート」(2012)という調査があります。

それによると「正社員として再就職できた人」は49.8%と約半数。契約社員やパート・アルバイトが17.7%で、24.5%が仕事をしていないと答えています。介護離職者の4人に1人が職を得られていないのです。

この調査は介護終了が死別だけでなく施設への入所も含まれ、年齢別でのデータはありません。「50代以上」を限定にして聞けば、正社員として再就職できる確率はもっと低くなるのではないでしょうか。

親の看取りを終え、幸い仕事を見つけることができても、収入は以前に比べ、半分になってしまうのが現実だ。

また、「再就職までの期間は1年以上」と答えた人が最も多く、男性は38.5%、女性は52.2%。気持ちを立て直して動き出すまで時間がかかり、就職活動をしてもなかなか採用に至らないということ示しています。

親の介護をする年齢といえば40代から50代。ただでさえ、この年齢になれば、就職先を見つけるのは難しくなります。総務省の労働力調査では、55歳から59歳までの人が仕事に就けない理由を出しています。それによると「求人の年齢と自分の年齢があわない」が46.4%、「条件にこだわらないが仕事がない」が11.9%。つまり、年齢が大きな壁となり、とにかくどんな仕事でもいいから働きたいと思っても相手にされないという現実があるのです。

ところで人手不足が深刻な問題といわれているのが介護業界です。

介護離職をした人は介護の経験があるわけですし、介護職に就くことは考えられないのでしょうか。Fさんに聞いてみたところ「選択肢としてはありますが、現実には難しいと思います」という答えが返ってきました。

「その理由としては、まず激務だということです。職種にもよりますが、要介護者の体を支えるなど体力を使う仕事は避けられません。若い人でも多くが腰を痛めますからね。体力が落ちた中高年者が行うには厳しい。また、そうした激務の割には低賃金というのもネックになります。それともうひとつ介護は女性が多い職場ということもあります。女性なら順応できる方もいるでしょうが、男性が馴染むのは難しい」

介護職に就いてもすぐに辞めてしまう人が大半。よほど体力に自信があり、なおかつ人の世話をすることに喜びを感じるタイプでないと務まらないそうです。