「ライフスタイルを提案する」というコンセプトを同じくする代官山の蔦屋書店とは、よく比較されます。でも立地上、ターゲットは明確に異なります。代官山は「洗練された大人の街」です。そこで代官山の蔦屋書店ではつくり込む部分を少なく、過剰な装飾を排除したナチュラルな雰囲気でまとめてあります。一方で、二子玉川は「ファミリーの街」です。家族みんなで来て、それぞれが好き好きに家電や本を眺め、店内のソファで待ち合わせてもらう――。まるで「おもてなし」ともいえるような工夫が蔦屋家電には必要でした。なかでも子どもをいかに飽きさせないかが肝心なので、キラキラしてわかりやすい仕様を意識して組み込みました。それは店内にふんだんに置かれた植物やアートによく表れています。

たとえば漫画の吹き出しのようなミラーアートを壁に施した席。そこに2人で座ると、吹き出しと一体化して考え事をしているように見える。こうしたちょっとした驚きを積み重ねていくことが、楽しさや夢見心地な空間の演出につながっていくのです。

土日の来店者数は1日平均2万8000人

2015年5月、東京・二子玉川の商業施設「二子玉川ライズ」内にオープン。本を中心に860坪の1階はテレビや携帯電話などパーソナルな商品、1312坪の2階はキッチン家電、洗濯機などの家族で使える商品を揃える。平日は平均1万8000人、週末になると1日平均2万8000人が来店する(15年9月現在)。

 
池貝知子(建築家/デザイナー)
1990年、日本女子大学家政学部住居学科卒業。建築設計事務所を経て、2006年に一級建築事務所アイケイジー設立。代官山蔦屋書店のクリエーティブディレクションも手がける。「Andrew Martin Interior Designer of the Year Award」などを受賞。
(構成=田中裕子 撮影=佐藤新也)
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