最も大事な尊厳はトイレに行くこと

そこで最近、金銭と手間両面の介護コストを減らすために注目されているのが、リハビリの効用である。中村氏が力説する。

「人間の尊厳のうちで最も大事なことは、自分でトイレに行って、自分で排泄を済ませられることではないかと私は思います。車椅子から1人で立ち上がり、便器に移動する。それぐらいの筋力は、リハビリすれば戻ります。多くの家族は、高齢の親が退院してくると、上げ膳据え膳で面倒を見ようとします。しかし過保護によって自分で何もしなくなってしまうと、高齢者はたちまち衰えます。よかれと思ってしたことが、かえってよくない結果を招くのです」

各種の介護施設でも、意識の高い施設はリハビリに力を入れている。デイケア(通所リハビリ)はもともと運動機能を回復するためのリハビリテーションを目的としている。一方、デイサービス(通所介護)は、デイサービスセンターや特別養護老人ホームなどの福祉施設で行われ、食事や入浴サービスなどが中心だ。最近はデイケアに加えデイサービスでも、機能回復や筋肉トレーニングのメニューを取り入れるところが増えているという。

利用者3割負担時代は来るか?

要介護の人でも1人で排泄できれば、家族の介護負担がぐっと減るので、その分のコスト軽減効果は少なくない。

「同じ費用をかけるなら、デイサービスでもリハビリ重視の施設を積極的に利用するのがいい」と中村氏はアドバイスする。

ところで、介護費用は現状の「利用者1割負担」が続くのか。「今後は医療費と同様、所得に関係なく2割~3割負担になるとか、介護保険料の徴収開始年齢を20歳に引き下げるというように、国民負担が増える方向に向かう」と中村氏は見る。高所得者の負担割合を増やすといった検討もされているが、まだ見通しはつかない状況である。

 
▼対策ポイント
・施設やサービスはすでに充実、料金次第で対応してもらえる
・民間施設の低料金化が都内でも進んでいる
・リハビリを重視し自力排便できる身体を保つ
中村聡樹(なかむら・さとき)
1960年、兵庫県生まれ。中央大学経済学部卒業後、行政専門誌記者を経てフリーに。著書に『図解 介護保険のサービス内容・料金早わかりガイド』などがある。
 
(永井 浩=撮影)
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