反対派もメロメロに進次郎のレジェンド
これまでも党きっての「客寄せパンダ」として選挙中は街頭に立ち、群を抜く説得力で同僚議員たちを応援してきた進次郎氏。ところ構わず正論を述べ、妥協を許さない頑固な一面も持つため、地方の有力者を前にした実践の場でその話術がどれだけ通用するかは未知数だ。しかし、成功に持ち込む可能性を感じさせる過去の事例がある。
13年3月9日、進次郎氏は沖縄県南大東島を訪れた。国境離島の暮らしはTPP交渉で保護を求めていた重要5項目の1つであった砂糖の生産で成り立っており、「サトウキビは島を守り、島は国土を守る」という標語が島のいたるところに見られる。当時党青年局長だった進次郎氏は、TPP推進派の若手2人、慎重派3人と島の現状を知るために訪れたのだ。鈴木氏も同行していた。島の有力者たちは、大勢の報道陣を引き連れた一団を空港で横断幕を持って歓迎したが、意見交換会では「TPP断固反対」と口を揃えた。それに対し進次郎氏は「私は交渉に参加すべきという立場ですが、みなさんの島を思う気持ちがひしひしと伝わってきて、愛国者の集まりだなあと胸がいっぱいになりました」と発言。たった4時間ほどの滞在で、強張っていた島民たちの表情をすっかり笑顔に変えたのだ。「反対」を訴えていた村長まで、進次郎氏が帰途に着く頃にはトーンダウンしていた。
かつてコメを開放したウルグアイ・ラウンド合意後は、約6兆円を投じてつくられた「温泉ランド」「農業資料館」、使われないPCが何十台も並ぶ「農業情報化センター」などが批判の対象となった。そんな過去を踏まえ、進次郎氏は「カネのばらまきとか農業の成長産業化につながっていないとの声が起きないような対策を打たねばならない」と強調している。
これまでも言葉の力で身の丈以上の重役をこなしてきた進次郎氏。今回も農家への説得力が注目されるが、結論次第では「バラマキを許した」と批判の矛先になり、総理を狙ううえでのアキレス腱にもなりかねない。かつて加藤紘一、羽田孜両氏らも農林部会長として難題を打開し、総理を狙う切符を手にしていた。進次郎氏はレジェンドをつくることができるか。