進次郎と農業の意外な好相性の理由
10月の内閣改造前には入閣待望論が巻き起こったものの、政務官留任もなく無役に転じた自民党の小泉進次郎衆院議員。早くから入閣説を否定し、「雑巾がけがしたい」と党内の裏方として研鑽を積む意欲をしきりに公言していた彼が、新たな一歩を踏み出した。
10月27日、永田町の自民党本部。最上階にある1番大きな会議室は、国会閉会中にもかかわらず国会議員や秘書たちでごった返していた。部屋前方の雛壇には森山裕、林芳正、西川公也という新旧農水相ら大物議員が顔を揃える。党農林族が一堂に集う農林部会と農林水産戦略調査会の合同会議である。その会場に“土の香りがしない”1人の議員が大きな拍手で迎えられ、司会役としてマイクを握った。
「このたび農林部会長に就任した小泉進次郎です。1つ明らかなことがあります。この中で誰よりも農林の世界に詳しくありません」
ノータイ姿の進次郎氏はそう言って出席者から笑いを取った。
政府は大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)に向け、11月25日までに農業対策を含む基本方針を策定したいと考えている。そのため合同会議は、進次郎氏の表現を借りるなら「突貫工事」で17日までに党内の意見を集約しなければならないのだ。
TPPを巡っては「自民党に裏切られた」と感じている農家は少なくない。10月中旬にあったJAグループの全国大会では、幹部たちから合意内容への不満や不安が噴出し、政府に万全の対策を求める特別決議まで採択された。自民党にとって農家は伝統的な「集票マシン」の1つ。それでも昨年、安倍政権は長年のタブーだった岩盤規制の打破を軸とする農協改革を断行した。今回検討されるTPP対策の行方次第では、農協との関係がさらに悪化する懸念もあり、選挙区に農村部を抱える議員たちからは「これでは来夏の参院選が戦えない」との声も上がっている。