オヤジの聖地に「ホルモンヌ」殺到!
ジンギスカンブームのほんの数年後、今度は「ホルモン」に注目が集まります。モツ鍋やモツの串焼、あるいは卓上の七輪などでモツを焼くホルモン焼が一気に広まっていきました。このときにしきりに語られたのは、「コラーゲン」というキーワードでした。科学的な真偽はさておき、コラーゲンを摂取すると「肌がぷるぷるになる」と言われ、そのコラーゲンを多く含むホルモンには美肌効果があると評判になったのです。かつて「オヤジの聖地」であったモツ料理の店には、そうした女性たちが押しかけ、メディアは彼女たちを「ホルモンヌ」と呼んで取り上げました。
他のケースも見てみましょう。韓国料理の1つに「サムギョプサル」というものがあります。これは焼いた豚のバラ肉を野菜で包んで、特製の味噌などをつけて食べるものです。ジンギスカンやホルモン焼ほど世間を巻き込むようなブームとはなりませんでしたが、都市部の飲食店では一時期見かけることが急増したメニューです。
韓流ブームの影響で韓国料理に注目が集まっていたのがサムギョプサル人気の発端ではありますが、このメニューが語られるときに必ず付きまとうのは、「野菜がたくさん食べられる」というフレーズです。確かにサムギョプサルは焼いた豚肉を楽しむ料理ですが、サンチュやエゴマの葉、あるいはそれ以外にも様々な野菜を一緒に食べるために、「ヘルシー」というイメージが付いて回るのです。
さて、ここまでの事例を見てわかる通り、過去にブームとなった肉料理の影には実は「健康」というフレーズがちらちらと見え隠れしています。外食の世界においては、本能である食欲に強く訴えかけて、「おいしそう!」「おいしい!」と感じてもらうことが何よりも大切です。しかしそこにとどまらず、「健康イメージ」によって理性のツボをそっと押してあげることで、お客に対して、食欲に対する「免罪符」を提供することになるのです。