Q: まずは何から整理整頓すればいいですか?
私がアップルの管理職に昇格してまず最初に行ったのは床に散乱した機材の整理整頓。番号を振り、配置する棚を作り、図書館のように借りる人、期間などを把握できるようにしたことです。すると、これまで「返すと他の人にとられる」と言って使用後も機材を抱え込んでいた人たちが、きちんと返すようになりました。
機材の取り合いから起こる社員同士のもめごとや、必要な機材確保に使われていた無駄な時間や労力が解消されたのです。また、借りられる頻度が高い機材や全く必要でないのにたくさん在庫のあった機材も把握できるようになりました。使われないものは最小限の数だけ残して処分、みんなが必要とするものは最初から全員分準備し配布できるようになったことで、機材にかけていた予算は大きくダウン。保管スペースも少なくて済むようになり、管理に必要な人数も減らせて、物と人、両方の無駄が省けました。同時に、仕事に取りかかるときに必要なものが確実に手に入り、効率アップにもつながったのです。
さらに最適な労働環境をつくりたいと、次に私が取り組んだのがオフィスレイアウトの改善でした。日本支社にいたときも取り組みましたが、規模の大きさで言えば米アップル本社移籍後のほうが大々的に取り組むことができ、最後は新しく購入したビル1つ全部のレイアウトも任されました。
Q: 効率の悪いオフィスってどんなものですか?
当時のアメリカの一般的なオフィスといえば、個人のデスクが背の高い壁で仕切られたキューブ型。自分の作業に集中しやすい半面、さぼっていても誰の目にも留まらず仕事中にゲームやネットサーフィンをしている人が後を絶ちませんでした。個人のアウトプットのレベルも差が大きく、チーム内のコミュニケーションも悪くグループパフォーマンスも低かったのです。
そこで、今度はデスク間の壁を取って島のようにまとめ、チームごとに部屋をあてがいました。すると、お互いの顔が見えるので仲間意識が高まり、相互監視が働くようになった。コミュニケーションも作業効率もよくなり、連絡事項の伝達ミスや期限やぶりもなくなりました。しかし、チームパフォーマンスは一気に向上したものの、今度は別チームとのコミュニケーションがうまくいかなくなった。
そこで次は、約40人の部署全員を大きな1つの部屋に入れ、チームは島状態に、チーム間は低い棚で仕切りました。典型的な日本のオフィスに近い状態ですね。チーム間の連帯は向上し、部署全体のアウトプットは大きく向上しましたが、社員からは非常に不評なレイアウトでした。大人数いることでだらける人がでてきたり、大勢の声で非常に騒がしく仕事に集中できなくなったりしたのです。これはどれも私の失敗例ですが、現在のオフィスがこれらの状態と同じ人は、見直すと生産性が上がるかもしれませんよ。