なぜ、母親は子どもに退学届を書かせたか
(2)子どもより自分の安心感を最優先する親
神経症(不安障害)として病院に行くほどではないが、外出時の戸締りや火の元が気になって、何度確認しても落ち着かない人は多いと思うが、このように何かを確認してもしても「不安感」を払拭できないタイプは要注意である。
どんな人間だろうと「不安」はある。「不安」がない人間はいない。それを十分認識できているのに、常に「不安感」がつきまとって離れない。
このタイプは自らが大変厳しい親の元に育っているケースが多いように思う。その自らが持つ「不安感」をひとりで抱えている分には何の問題もないのであるが、このタイプの問題点は「○○になったら、どうしよう?」と子どもを縛り付けてしまう、あるいは、心配しすぎて「先回り」してしまうことにある。
どうにかして親自身が「安心感」を手に入れたいので、こういう行動に走ったりする。
ある母はせっかく受験して入った中高一貫校から「肩たたき」(=成績不振による放校処分の訓告を受けること)に合った途端、こんな行動に出た。
中学生の息子に退学届を書かせたのである。
「次回の定期テストで赤点があった場合は退学します」
もちろん、本心から退学させたいわけではなく、むしろその逆だ。息子の奮起を猛烈に期待しているのである。
だが、学校からは放校をチラつかされ、親からは退学を迫られるティーンエージャーが奮起できるわけがない。学校教育とすべての大人に強烈な嫌悪感を抱かせるだけだ。
こういう親はいざ子どもが不登校になると「いついつ攻撃」を繰り返す。
「いつから行く気?」「いつになったら行けるの?」「いつ勉強するの?」と言葉にせずとも全身で訴えている。要するに「いつまで待てば、私(親)は安心できるの?」と言っているのだ。
親がこういうことを言っているだけなら、それはそれでよいのであるが、この手のタイプの親の元に育つと子どもはこうなりやすい。
すなわち「100かゼロの思想」にはまってしまうのだ。
言い方を変えれば、完全勝利か、それが叶わない場合には最初から戦いに参加していないという「体(てい)」を装う。
テストを受けるならば親や教師を納得させる点数でなければならないので、それができないのならば最初から受けない。そもそもその土俵に乗っていないのだから、俺には責任がないと初めから逃げを決め込んでいるのだ。
この思考にはまられると、そこから抜け出し、1でも2でもいいから、とりあえず行動するという「動き」は期待できない。
(3)夫婦仲が悪い家庭
説明するまでもない。
夫婦が罵り合いをしている家庭も問題であるが、夫婦間の会話もないような家庭はやがて子どもに対して「放任」か「無関心」か「過干渉」かのいずれかになるだろう。土台が安定しない家には不安定な子しか育たない。