会話のセンスがない学生は失格
第4条は「借り物より自然体の会話」。
個人面接では会話形式で行われることが多く、コミュニケーション能力や協調性が試されます。会話で大事なのは相手の話をしっかりと受け止めること、そして当を得た応答です。百貨店の人事課長はこう指摘します。
「会話のときに時折目をそらしたり、最後まで話を聞かない学生がいます。こちらが聞いてもいないことを勝手にしゃべり出す学生もいる。いわゆる会話のセンスがない学生は失格です」
面接官がとくに辟易するのは「代わりばえのしない優等生的回答」です。運輸業の人事課長はこう指摘します。
「10人中8人ぐらいが、いかにも面接本に載っているような返事をしてきます。こちらも質問する気が失せてしまいます。学生が完璧な答えを出すのは無理と最初からわかっていて質問しているのです。間違っていてもいいので、自分で考えたことを素直に話す学生のほうが好感が持てます」
第5条は「話の引き出しは数多く」。
部長面接を通過しても最終の役員面接で落とされることも珍しくありません。過去の経験談が下位の面接では受けても役員は違う視点からチェックします。精密機器メーカーの人事部長はこんな体験談を披露します。
「球技系スポーツの学生団体の副会長としてがんばった経験のある地方国立大学の学生が、最終の役員面接で同じ話をしたところ落とされました。理由は役員の1人が同じスポーツの世界選手権の入賞者だったからです。学生が活躍したことを力説しても、たいしたことはないと評価されたのが敗因です」
その学生は母子家庭に育ち、剣道でスカウトされた私立高校時代に活躍し、普通受験で国立大学に合格した経歴の持ち主でした。じつは人柄が気に入った人事部長は役員面接でそのことを話せば役員に好感を持たれるよ、とアドバイスをしていたのです。
しかしその学生はあくまでも大学時代のスポーツ経験にこだわったのです。そして結果的に失敗しました。面接では話の引き出しを数多く用意していることが重要です。そしてその中から何を話すべきかを精査することが面接突破で大事なのです。
※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。