内向か外向かは、遺伝子だけでなく育ちも関係する
外界の刺激を察知し、脳から神経系に指令を出す扁桃体が興奮しやすい乳児は、外からの刺激に大きく反応し、初対面の人間に用心深く接することが判明した。すると、内向型か外向型かを決めるのは持って生まれた神経系の働き、つまり遺伝子によって左右され、育った環境は関係ないかのように思える。が、ことはそう単純ではなかった。
ケインがケーガンに取材した内容によると、たとえ低反応タイプであっても、内向的になりやすい環境因子がある。たとえば人前で話をすることに躊躇するのは、頭の中で話すことがまとまらないと話せないタイプなのかもしれないし、体の不調がそうさせているのかもしれない。ケインはこう結論づける。
「私の内向性は100%遺伝子から来ているのかもしれないし、そうでないかもしれない――あるいは、遺伝子と経験がなんらかの割合で混じり合っているのかもしれない。それが生まれつきか育ちのせいかを問うことは、雪嵐は気温のせいか湿度のせいかと問うようなものだとケーガンは言う。両者が精妙に影響し合って、私ができているのだ」
内向型は知的作業を行う面で外向型よりも優っている。小学校では外向型のほうが内向型より成績がいいが、高校や大学になると往々にして逆転する。修士号や博士号を取得する人数も内向型のほうが多い。それは賢さ、つまりIQの差ではなく、課題に対して自らの認知能力をどのくらい使うか、という差によるものだという。その結果、内向型は外向型に比べて、物事を注意深く考え、行動する前に熟慮し、難しくとも簡単にはあきらめず、より正確に作業を行うという特質を持つ。
しかも、内向型は仕事によって得られる金銭ではなく、仕事そのものを愛する傾向が強い。外向型よりもドーパミンと呼ばれる脳内神経伝達物質の活性度が弱いからだ。そのため、外向型よりも、人間が肉体的にも精神的にもある物事に完全に没頭している「フロー」という状態になりやすいのだ。